先に結論:最初の数か月は有在庫で作る
結論から書きます。これから始める方は、最初の数か月を有在庫で作ってください。しかも、わざわざ仕入れる必要はありません。家にある不要品から始めるのがいちばん確実です。
理由は「無在庫が儲からないから」でも「無在庫が禁止されているから」でもありません。販売件数が少ないうちは、在庫切れによるキャンセルが1件出ただけで、アカウントの評価が一段下がってしまうからです。これはやる気や注意力の問題ではなく、割り算の結果としてそうなります。具体的な数字は後の章で見ていきます。
そのうえで、無在庫そのものを否定するつもりはありません。件数が積み上がって、扱うジャンルの在庫状況が自分で分かるようになれば、選択肢として十分に成立します。これは優劣の話ではなく、順番の話です。
- eBayは無在庫を一律に禁止していない。認めている形と、認めていない形がある
- 認めていないのは「他の小売サイトで注文し、その店からバイヤーへ直送させる」形
- 日本のセラーがよくやる「売れてから国内で買い、自宅で受け取って自分で送る」形は、この文面には当たらない
- ただし当たらないことと、安全なことは別。危ないのは在庫切れによるキャンセルのほう
- 月30件のうち1件をキャンセルすると3.33%。基準は0.5%以下なので、1件で届かなくなる
- だから最初は有在庫。件数という分母が育ってから、無在庫を検討する
eBayが認める無在庫と、認めない無在庫
eBayのドロップシッピングに関する案内には、認められる形が2つ挙げられています。ひとつは出品する時点で、その商品を自分が持っている場合。もうひとつが卸業者と契約を結び、その卸の商品を出品・販売する場合です。後者は、卸から直接バイヤーへ発送してもらう形も含みます。
反対に、認められない形はこう書かれています。手元にない商品をeBayに出品し、売れてから他の小売業者やマーケットプレイスで購入して、その店からバイヤーへ直接発送させること。あわせて、他の小売業者やマーケットプレイスの利用規約は、eBayの出品者としての義務を果たしたことにはならないとも書かれています。
この2つを分けている線は「在庫を持っているかどうか」ではありません。仕入れ先が卸なのか小売なのか、そして商品を送り出しているのが誰なのか、この2点です。ここを取り違えると、話が最後まで噛み合いません。
eBayは違反への対応として、出品の削除や取り消し、検索結果から隠すことや順位を下げること、セラーレベルの引き下げ、売買の制限、バイヤー・セラー保護の対象外、アカウントの停止までを挙げています。加えて、対象になった出品やアカウントに支払った手数料は返金されないとも明記されています。
ここで注意したいのが、順位を下げるという対応です。アカウントが止まるわけではないので何が起きているのか本人には見えません。売上が落ちた理由が分からないまま、広告費を足したり価格を下げたりして原因を探すことになります。分かりやすい罰よりも、こちらのほうが実務では厄介です。
日本から輸出する場合、どちらに当たるのか
ここが多くの記事で飛ばされているところなので、丁寧に見ていきます。日本のセラーが「無在庫」と呼んでいるやり方は、実際にはこういう流れであることがほとんどです。手元にない商品を出品する。売れる。国内の通販サイトやフリマアプリで注文する。自宅に届く。検品して梱包する。自分で海外へ発送する。
この流れを、さきほどの公式の文面に当てはめてみます。禁じられているのは「その店からバイヤーへ直接発送させること」でした。上の流れではいったん自分の手元に届いていて、海外へ送り出しているのは自分です。つまり、この文面が禁じている形には当たりません。
反対に、はっきり当たるのは次のような形です。仕入れ先の注文画面で、届け先に海外のバイヤーの住所を入れる。あるいは仕入れ先から転送業者へ直接送らせ、そのまま海外へ出す。荷物が自分の目を通っていない形は、危ないと考えてください。
- いったん自宅で受け取って自分で送る形は、ドロップシッピングポリシーが禁じる直送には当たらない
- ただし出品時点で商品を持っていないという事実は変わらない
- 持っていないということは、売れた瞬間に仕入れ先で売り切れている可能性があるということ
- そのときのキャンセルは出品者都合として記録され、指標に数えられる
- つまり無在庫の危なさは、ポリシー違反ではなく在庫切れの側にある
在庫切れ1件が、指標にどれだけ響くか
eBayはセラーを評価するときに、いくつかの数字を見ています。そのうち在庫切れに関わるのがTransaction defect rate(不良取引率)です。出品者都合のキャンセルは、ここに数えられます。
基準は0.5%以下でTop Rated、2.01%以上でBelow Standardです。この数字だけ見ると、ずいぶん余裕があるように思えます。ところが自分の販売件数に当てはめると、印象がまるで変わります。
月30件を売っている人が1件キャンセルすると、3.33%です。基準の6倍以上で、1件でBelow Standardに届いてしまいます。月100件でも1.00%、月200件でようやく0.50%です。件数が少ないうちほど、1件の重みが大きいという、単純な割り算の話です。
Below Standardと評価されると、落札手数料に6%が上乗せされます。この状態が4か月以上続くと、上乗せは7%に上がります。上乗せは、元の状態に戻るまで続きます。
手数料だけではありません。検索での順位が下がり、売上金が保留されることがあり、Promoted Listingsも使えなくなります。売れにくくなったうえに、売れたときの手取りが減るという重なり方をします。評価の指標そのものについてはセラーレベルとサービスメトリクスに、キャンセルの実務はキャンセル対応の3パターンにまとめてあります。
「資金がいらない」は正確ではない
無在庫の利点としていちばんよく挙げられるのが「初期資金がいらない」です。ここも、もう少し正確に見ておきましょう。
無在庫でも仕入れ代金は払います。払うのは売れたあとですが、そのお金がeBayから戻ってくるのは、もっと後です。バイヤーが支払ってからおおむね2営業日でAvailable fundsになり、そこから設定した周期でPayoneerへ、さらに日本の銀行へと移ります。各段で1〜2営業日かかるので、売れた日と着金日は1週間前後ずれます。この流れはeBayで売れた後の流れで詳しく追っています。
つまり無在庫でも、仕入れ代金を立て替えている期間が必ずあります。クレジットカードで仕入れる場合は締め日と引き落とし日の関係次第で、入金より先に引き落としが来ることもあります。「売れ残りを抱えるリスクがない」ことと「資金がいらない」ことは、別の話なのです。
そう考えると、家にある不要品から始めるやり方は、資金の面でも一番軽いことが分かります。仕入れ代金がゼロなので、立て替える必要もありません。売れた分がそのまま次の仕入れ資金になります。
手数料と利益の全体像はeBay手数料の全体像と利益計算に、何を売るかの探し方は自宅から始めるリサーチにまとめてあります。
発送までの日数を、どう設定するか
ハンドリングタイムは、バイヤーの支払いを受けてから配送業者が荷物を受け付けてスキャンするまでの営業日数です。郵便局の窓口に出した瞬間ではなく、業者側のスキャンが基準になります。1営業日に設定していれば、翌営業日の23時59分59秒までです。
有在庫なら、商品は手元にあります。売れたその日に梱包して出せます。無在庫の場合はここに国内で注文する・自宅に届くのを待つ・届いた商品を検品するという工程が挟まります。国内の通販でも、注文から手元に届くまで1日から3日はかかります。
この日数を無視して短いハンドリングタイムを設定すると、Late shipment rate(発送遅延率)のほうが悪化します。基準は3%以下です。かといって長めに設定すれば、バイヤーに見える配送予定日が後ろへずれ、同じ商品を持つ他のセラーより選ばれにくくなります。どちらかを選ぶことになる、というのが無在庫の構造です。
ここでの答えは単純で、守れる日数を正直に設定することです。見え方を優先して守れない日数を入れるのは、いちばん損な選び方になります。発送通知から入金までの流れはeBayで売れた後の流れにまとめてあります。
出品リミットという、動かせない制約
もうひとつ、動かせない前提があります。eBayの新規アカウントには出品リミットがあり、初期は月10品・合計500ドルまでです。
無在庫の利点として語られるのは、たいてい「在庫を持たないから、たくさんの商品を並べて、当たったものだけ仕入れられる」という点です。ところが始めた月に並べられるのは10品です。数を並べる戦略は、この段階では物理的に成立しません。
そしてリミットを上げるには、販売実績と評価を積む必要があります。最初の数か月に出せる品数は、無在庫を選んでも有在庫を選んでも同じだということです。同じ10品を並べるなら、在庫切れの心配がないほうを選ぶ理由しかありません。枠の育て方はeBayリミットアップの方法にまとめてあります。
- 出品リミットが育っている。数を並べられる枠がなければ、無在庫の利点そのものが使えない
- 月の販売件数が積み上がっている。分母が小さいうちは、1件のキャンセルで指標が壊れる
- 仕入れ先の在庫を自分で確かめられる。在庫数が表示される、または実店舗で確認できる
- 売れてから発送までの日数を、実際に測ったことがある。想像ではなく実測でハンドリングタイムを決める
- いったん自分の手元に届けて、自分で発送する形になっている。仕入れ先からバイヤーへ直送させない
- 写真と説明文を自分で用意している。仕入れ先の画像をそのまま使うと、別の理由で出品が消える(出品禁止商品とVeRO)
順番の問題であって、優劣の問題ではない
無在庫か有在庫かで悩んでいる時間は、多くの場合そのまま「まだ1件も出品していない時間」になっています。この記事を読み終えたら、押し入れでも本棚でも構わないので、家の中から1品だけ選んで出品してみてください。
1件売れると、見えるものが一気に変わります。手数料が実際にいくら引かれるのか、梱包にどれくらい時間がかかるのか、入金がいつ入るのか。これらは全部、読んで知るより1回やってみたほうが速く分かります。そしてその1件が、リミットを上げるための実績にもなります。
- eBayは無在庫を一律に禁止していない。自分が持っている商品と卸業者と契約した商品は認められている
- 認められないのは他の小売サイトやマーケットプレイスで買い、その店からバイヤーへ直送させる形
- 仕入れ先の利用規約は、eBayの出品者としての責任の代わりにならない
- 違反への対応には順位の引き下げも含まれる。本人に見えないまま売れなくなる
- 日本でよくある「売れてから国内で買い、自宅で受け取って自分で送る」形は、この文面の直送には当たらない
- ただし在庫切れによるキャンセルは出品者都合として不良取引率に数えられる
- 月30件で1件をキャンセルすると3.33%。基準は0.5%以下なので、件数が少ないうちは1件で下がる
- Below Standardになると落札手数料に6%上乗せ(4か月以上続くと7%)、順位低下、資金保留、広告停止
- 無在庫でも仕入れ代金の立替え期間はある。売れた日と着金日は1週間前後ずれる
- 初期の出品リミットは月10品・500ドル。数を並べる戦略は始めた月には成立しない
- 結論は順番。最初の数か月は家にあるものを有在庫で売り、件数・評価・枠を作ってから考える