先に結論:必要かどうかは「売るために仕入れるか」で決まる
結論から書きます。古物商許可が必要かどうかは、売上の金額でも、eBayに登録しているかどうかでもなく、「売るために古物を仕入れるかどうか」で決まります。
家の不要品を売っているだけなら、許可は要りません。開業届の記事で書いた「不要品の整理は事業ではない」という線と、同じ場所に線があります。一方、メルカリやヤフオク、リサイクルショップで売れそうな中古品を買ってきてeBayで売るなら、それは古物営業法が定める「古物の売買を営む」形のど真ん中で、仕入れを始める前に許可が必要です。
手続きそのものは、資格試験のような難しさではありません。住所地を管轄する警察署に書類をそろえて出し、手数料19,000円を納め、審査を概ね40日待つ。それだけです。ただし、書類の集め方と順番に、知らないと二度手間になる点がいくつかあります。この記事でそこを先回りします。
- 許可が必要になるのは「売るために古物を仕入れる」人。家の不要品の販売なら要らない
- 法律の「古物」は中古品だけではない。一度消費者の手に渡ったものは、未使用でも古物。メルカリの「新品・未使用」仕入れも対象になる
- 申請先は主たる営業所(自宅でよい)の所在地を管轄する警察署。手数料19,000円、審査は概ね40日
- 書類でつまずきやすいのは「身分証明書」。運転免許証のことではなく、本籍地の市区町村が発行する証明書
- eBayのURL届出は、eBayが証明書類を発行しない代わりにスクリーンショット2枚で疎明する
- 無許可のまま仕入れ販売をすると3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象。順番はいつでも「許可が出てから仕入れ」
古物商許可とは何か:開業届とは違う、本物の「許可」
古物商許可は、古物営業法(昭和24年制定)に基づく許可です。中古品の売買は、盗まれた品物の換金先に使われやすい。そこで、古物を商売として売買する人に都道府県公安委員会の許可を求め、仕入れの記録と相手方の確認を義務づけることで、盗品が紛れ込んだときに追跡できるようにしています。窓口は警察署ですが、これは取り締まりのためというより、中古市場の信用を保つ台帳の仕組みと考えると実態に合います。
前回の記事で整理したとおり、開業届は税務署への「報告」で、審査がなく、出さなくても事業は始められます。古物商許可はその逆です。申請と審査があり、許可が出るまでは古物の仕入れ販売を始められません。名前の似た2つの手続きのうち、始める前に段取りが要るのはこちらです。
制度の形も押さえておきます。2020年施行の法改正で許可は全国で一本化され、主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会の許可を1つ取れば、全国で営業できます。個人の場合、主たる営業所は自宅で構いません。また、許可に有効期限はなく、更新の手続きもありません。一度取れば、廃業や取消しがないかぎり続きます(住所やURLなどが変わったときの変更届は必要です)。
許可が要る人・要らない人:4つのパターン
「自分は必要なのか」を、よくある4つのパターンで整理します。この線引きは愛知県警察が公開している古物営業法Q&Aの説明に沿っています。
① 自分が使っていたもの・自分で使うために買ったものを売る。許可は要りません。使うつもりで買ったが未使用のまま、というものも同じです。家の不要品をeBayで売る段階の人は、全員こちら側です。
② 無償でもらったものを売る。許可は要りません。古物営業法が対象にするのは「買い受け」を含む取引で、タダで引き取ったものを売るだけなら当たりません。
③ 自分が海外で買い付けて輸入したものを売る。許可は要りません。古物営業法は国内の中古市場を対象にした仕組みで、販売者自身が外国で買い付けて輸入したものを売るのみであれば許可は不要、と警察も明示しています。
④ 売るために国内で古物を買って売る。ここが許可が必要になる唯一の、そして輸出セラーにとって最大のパターンです。リサイクルショップで、メルカリで、ヤフオクで、「これはeBayで売れる」と思って買った瞬間、その仕入れは古物営業です。継続して利益を出すつもりの売買は、件数や金額が小さくても営業に当たります。「自分で使うつもりだった」という言い分は、実際に転売を繰り返していれば通りません。
開業届の記事で書いた「売るために仕入れたかどうか」という線と、ほとんど同じに見えます。実際、ほとんど同じです。ただし1つだけ違いがあります。開業届の線は税金の話なので、越えても後から届を出せば済みます。古物商許可の線は法律の許可の話なので、越える前に許可を取っておく必要があります。同じ場所にある線でも、またぐ順番が違う。ここがこの記事でいちばん大事な一文です。
「古物」の範囲は広い:新品のつもりで買っても古物になる
ここで、多くの人が誤解する「古物」の定義を確認します。古物営業法の古物は、①一度使用された物品、②使用されない物品で使用のために取引されたもの、③これらに幾分の手入れをしたものの3つです。
注目してほしいのは②です。「使用のために取引された」=一度でも一般の消費者の手に渡ったものは、袋を開けていない未使用品でも古物として扱われます。つまり、メルカリで「新品・未使用」と書かれた品物を買ってeBayで売る場合、商品の状態がどれだけ新しくても、法律の上では古物の仕入れです。「中古品は扱わないから自分には関係ない」という判断は、この②を見落としています。
古物は13の品目に区分されていて、申請のときに主として取り扱う区分と、扱う予定の区分を選びます。美術品類、衣類、時計・宝飾品類、自動車、自動二輪車及び原動機付自転車、自転車類、写真機類、事務機器類、機械工具類、道具類、皮革・ゴム製品類、書籍、金券類の13です。eBay輸出の定番でいえば、カメラは写真機類、腕時計は時計・宝飾品類、着物は衣類、本は書籍、そしてトレカ・ゲーム機・フィギュア・レコード・釣具はまとめて道具類に入ります。売れるものの記事で挙げた定番ジャンルは、ほぼこの数区分に収まります。区分は後から変更届で増やせますが、扱いそうなものは最初の申請で選んでおくほうが手間が少なくて済みます。
申請の流れ:警察署で、書類をそろえて19,000円、約40日
申請の全体は5つのステップです。最初のステップは、書類のダウンロードではなく、管轄警察署への電話です。申請先は主たる営業所(自宅)の所在地を管轄する警察署の生活安全課(防犯係)です。担当部署の呼び方は署によって「生活安全課」だったり「防犯係」だったりと少しずつ違い、必要書類の細部や様式の運用も都道府県によって違います。「古物商許可の新規申請をしたい」と電話して、担当の在席時間と自分のケースで必要な書類を確認してから動くのが、結局いちばんの近道です。
個人申請の基本の書類は5種類+αです。許可申請書(様式は各都道府県警察のサイトからダウンロード)、略歴書(最近5年間の経歴)、本籍が記載された住民票の写し、誓約書(欠格事由に当たらないことの誓約)、身分証明書、そしてネットで売る人はURLの使用権限を疎明する資料(次の章で説明します)です。
ここで、ほぼ全員が一度つまずく書類の名前を先に言っておきます。「身分証明書」は、運転免許証やマイナンバーカードのことではありません。本籍地の市区町村が発行する、破産手続開始の通知を受けていないことなどを証明する公的な書類のことです。本籍地が遠い人は郵送で請求できます。取り寄せに日数がかかるので、書類集めはここから始めると流れが良くなります。
書類がそろったら警察署に申請し、手数料19,000円を納めます(都道府県の収入証紙など、納め方は地域によります。不許可でも返還されません)。あとは審査を待ちます。標準的な処理期間は申請から概ね40日とされていて、土日祝日を除いて数えるので、体感では2か月弱を見ておくと落ち着いて待てます。許可が出たら警察署で許可証を受け取って完了です。
なお、審査で見られる欠格事由(一定の犯罪歴、破産して復権していない、など)は、普通に暮らしてきた人ならまず当たりません。誓約書の項目を読んで当てはまらないことを確認すれば十分です。書類を自分でそろえる時間が取れない人には行政書士の代行という選択肢もあり、報酬の相場は5万円前後です。ただ、書類の点数は多くても1枚1枚は難しくないので、時間さえ確保できれば自分で申請できる手続きです。
eBayのURL届出:スクリーンショット2枚で疎明する
自分のホームページやネット上のページを使って古物を売買する場合、そのURLを届け出て、自分に使用権限があることを疎明する資料を出します。eBayで売るなら、自分のセラーページ(ストアページ)のURLがこれに当たります。
ここでeBayならではの事情があります。プロバイダによってはURLの割り当てを証明する書類を発行してくれますが、eBayはこの種の証明書類を発行していません。代わりにeBay Japanが公式に案内しているのが、スクリーンショット2枚で疎明する方法です。
1枚目は、自分の販売ページのトップ画面。ebay.comにログインした状態で、ストアまたはセラーページを開き、URLと氏名、Seller IDが1つの画面に写るように撮ります。2枚目は、アカウント情報のページ。account settingsのプロフィール画面(Personal infoまたはBusiness info)を開き、Usernameと氏名(法人なら法人名)が写るように撮ります。この2枚で「この販売ページは、申請者本人のアカウントのものだ」というつながりを示すわけです。
実際にどの画面のどの範囲が必要かは、審査する都道府県警察の運用によって少しずつ違います。事前相談の電話のときに「eBayで販売する。URLの疎明はスクリーンショットでよいか」を必ず確認してください。登録情報によっては追加の資料を求められることもあります。
許可を取った後の義務:標識・古物台帳・相手方の確認
許可を取ると、古物商としての義務が始まります。主なものは3つです。
① 標識(プレート)の掲示。様式の決まった「古物商プレート」を営業所に掲げます。紺色の地に白文字で番号と氏名を入れたあの札で、ネットで数千円で作れます。あわせて、ネットで売る場合は販売ページに許可を受けた公安委員会名と許可番号などを表示することになっています。
② 古物台帳への記帳。古物を買い受けたら、日付・品目と特徴・数量・相手方・確認の方法などを帳簿(古物台帳)に記録し、保存します。様式は市販もされていますし、パソコンでの管理も認められています。開業届の記事で「帳簿が事業所得の分かれ目になる」と書きましたが、仕入れの記録をきちんと残す習慣は、税務の記帳と古物台帳の両方を一度の手間で満たす土台になります。
③ 相手方の確認。古物を買い受けるときは、相手方の住所・氏名などを確認します。対面なら本人確認書類の提示、ネットで仕入れる非対面の取引にも法律で認められた確認の方法が定められています。金額の小さい取引には確認を省略できる例外もありますが、品目によって例外の当てはまり方が違うので、自分の扱う品目でどう運用するかは、許可を受けるときに警察署で確認してください。
このほか、住所・営業所・URL・取り扱い品目などが変わったときの変更届があります。義務と聞くと重く感じますが、どれも「記録を残す」「変わったら知らせる」という種類のもので、日々の実務では仕入れのたびに台帳へ1行書き足すことがほとんど全てです。
いつ取るか:最初の仕入れから逆算する
最後に、これまでの内容を「いつ何をするか」に置き直します。
家の不要品を売っている段階では、何も要りません。開業届も古物商許可も、この段階の人には関係がない。eBayの操作と英語のやり取りに慣れる期間として、そのまま売ってください。
「売るために仕入れる」と決めたら、仕入れの前に申請します。審査は概ね40日、書類集めに2〜3週間かかるので、仕入れを始めたい日の2か月前が申請の目安です。許可が出たら、最初の仕入れの日が事業の入口になり、そこから1か月以内に開業届(青色申告承認申請書と2枚セット)を出す。開業届の記事のタイムラインの、さらに2か月前に古物商許可が乗る形です。逆に、早すぎる取得にも一応の注意があります。許可を受けてから6か月以内に営業を始めないと、許可の取消しの対象になり得るためです。「いつか使うかもしれないから」ではなく、始める時期を決めてから取る。それで十分間に合います。
もし、許可を取らないまま仕入れ販売を始めてしまっていたら。無許可営業には3年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金という罰則があり、罰金になればその後5年間は許可が取れない欠格事由にもなります。ただ、ここで読むのをやめて見なかったことにするのが、いちばん悪い選択です。やることは手続きです。気づいた時点で古物の仕入れをいったん止め、管轄警察署に正直に事情を話して、申請の相談をしてください。どう扱うかの判断は警察に委ねることになりますが、自分から相談して申請に来た人と、指摘されるまで続けた人が同じに扱われるとは考えにくい、とだけ書いておきます。
なお、許可を取って何をどう売るかは別の記事に譲ります。仕入れた商品がそもそもeBayで売ってよいものか、輸出してよいものかは古物商許可とは別のルールで決まります。出品禁止商品とVeROの記事で書いた「eBayのポリシー・日本の輸出規制・相手国の輸入規制」の3層です。古物商許可は、この3層の手前にある「日本国内で仕入れる」段階の法律だと位置づけて覚えてください。
- 仕入れを始めたい月を決め、その2か月前に申請すると逆算した
- 管轄警察署(自宅の所在地)の生活安全課(防犯係)に電話で事前相談した(eBayで販売すること・URLの疎明方法もここで確認)
- 本籍地の市区町村に「身分証明書」を請求した(運転免許証のことではない。郵送請求可)
- 許可申請書・略歴書・本籍記載の住民票の写し・誓約書をそろえた
- eBayのセラーページとアカウント情報画面のスクリーンショットを用意した(URL・氏名・Seller IDが写るように)
- 手数料19,000円を用意した(不許可でも返還されない)
- 許可が出るまで、売るための仕入れを始めていない