先に結論:対象商品を扱うなら、証明書データの電子提出が要る
2026年7月8日から、米国CPSC(Consumer Product Safety Commission=消費者製品安全委員会)が対象とする消費者製品について、輸入時に必要な「証明書」(Certificate of Compliance=安全基準を満たしていることを示す書類)のデータを、米国の税関であるCBPの電子システム「ACE」へ提出することが義務化されました。ACEは、米国に荷物を輸入するときの申告データが集まる仕組みだと考えてください。CPSC公式のニュースリリースで発表されている内容です。
この制度が難しく感じられるのは、「対象になる製品の範囲」と「今まで何が求められていたか」の前提を知らないまま、eFilingという新しい単語だけが先に届くからです。この記事では、まず何が変わって何が変わらないのかを整理し、そのうえで少額の荷物にも関係してくる理由、実際に確認する手順まで見ていきます。
- 変わるのは「証明書を作る」ことではなく「証明書のデータを電子で送る」こと。対象製品に証明書が要ること自体は前からあるルールで、今回新しく試験や認証の義務が増えたわけではない
- 対象になりやすいのは、おもちゃ・子ども用品・家具・自転車など、CPSCが安全基準を定めている約600のHTS(関税分類)番号に該当する製品。ワシントン条約や輸出規制と同じ「相手国側のルール」の一種
- 金額による除外は無い。米国UPSの公式ページも「shipment・entry・goodsの価値にかかわらず適用される。低価格や個人向け発送の例外は無い」と明記している
- 電子申告には都度入力する方式と事前に登録して参照番号を使い回す方式の2つがある
- まず必要なのは自分の扱う商品がそもそも対象カテゴリーに入るかどうかの確認。CPSC公式の無料ツールで調べられる
- CPSCの規制対象かどうかは、HSコード(HTS)の分類と同じく、品目ごとに条文レベルの細かさがあり、しかも改定される領域です。分類の最終判断が専門家でも割れることがあるのも同じです
- この記事で書けるのは制度の構造・確認の手順・どこで調べるべきかまでです。「自分の商品は対象かどうか」「自分が輸入者(Importer of Record)に当たるかどうか」の最終判断は、必ず後述のCPSC公式ツールで確認するか、利用している配送会社・通関業者に相談してください
この制度の解説にはアルファベットの略語が多く出てきます。ひとつずつ覚える必要はありませんが、読み進める前に意味だけ押さえておくと、内容がぐっと追いやすくなります。
- CPSC(シーピーエスシー)=米国消費者製品安全委員会。おもちゃや日用品の安全基準を決めている米国の政府機関
- CBP(シービーピー)=米国税関国境警備局。輸入品の通関を担当する、いわゆる米国の税関
- ACE(エース)=そのCBPが使っている電子システム。米国に輸入する荷物の申告データはここに集まる
- eFiling(イーファイリング)=今回義務化された「証明書のデータを電子で送る」手続きそのもの
- CPC / GCC=製品が安全基準を満たしていることを示す証明書。子ども向け製品はCPC、それ以外の一般消費者製品はGCC
- HTS番号=米国の関税分類番号。商品ごとに決まっていて、この番号で対象かどうかが判定される(詳しくはHSコード(HTS)の調べ方)
- Importer of Record=輸入者。輸入申告の責任を負う立場の人・会社のこと
変わったのは提出方法だけ。証明書は前から必要だった
CPSCが安全基準を定めている製品には、もともとCPC(子ども向け製品の適合宣言書)かGCC(一般消費者製品の適合証明書)のどちらかの証明書が必要でした。これは今回のeFilingで新しくできた義務ではありません。CPSC公式のニュースリリースでも「eFilingは国内製造業者には適用されず、新しい試験・認証・コンプライアンス義務を作るものでもない」と明記されています。
今回変わったのは、この証明書に書かれているデータを、輸入申告のたびに電子で米国税関(CBP)へ送るという「提出のやり方」です。以前は証明書を手元に保管しておけば足りましたが、これからは輸入のたびに、データそのものを米国税関の電子システム(ACE)へ送る必要があります。
電子申告で送るデータは、製品を特定する情報・適用される安全基準・製造年月日・製造地・試験を行った年月日・試験機関の連絡先・記録の保管担当者の連絡先、の7項目です(米国の法律事務所Foley & Lardner LLPが公開している解説記事で確認)。これらはもともと証明書に記載されている項目で、内容が増えたわけではなく、提出の形式が「紙・保管」から「電子・都度提出」に変わったと理解すると分かりやすくなります。
対象になりやすい商品:おもちゃ・子ども用品など約600のHTS番号
eFilingの対象は「輸入されるすべての商品」ではなく、CPSCが安全基準を定めている規制対象消費者製品に限られます。米国の法律事務所Foley & Lardner LLPの解説によると、当初の運用では約600のHTS(関税分類)番号が対象とされ、全地形車(ATV)や芝刈り機からカーペット・ラグまで幅広く含まれますが、とくにおもちゃや家具などの子ども向け製品が重点的に扱われています。
具体的にどの分類が対象かは品目ごとに細かく決まっており、しかも見直しが入る可能性がある領域です。HSコード(HTS)の調べ方で書いたのと同じ理由で、この記事でも「対象になりやすい代表例」までにとどめ、個々の商品が対象かどうかの断定は避けます。
- おもちゃ・子ども向け玩具(磁石を使ったものを含む)
- ベビー用品・子ども用寝具・ベビーベッドなど
- 子ども服(燃えにくさの安全基準が関わるもの)
- 自転車
- 全地形車(ATV)・芝刈り機
- カーペット・ラグなど床材
これは代表例の紹介であり、対象品目の網羅的なリストではありません。自分の商品が該当するかは後述のCPSC公式ツールで確認してください。
もう一つ大事な前提として、eFilingは輸入される製品が対象で、米国内で製造される製品には適用されません。日本から米国のバイヤーへ発送するeBayセラーの取引は「輸入」に当たるため、対象カテゴリーの製品を扱っている場合は無関係ではいられません。
少額の荷物でも対象になり得る:金額による除外は無い
関税の世界では、金額が小さい荷物に対して簡易な扱いが認められることがあります。しかしCPSCのeFilingについては、米国UPSの公式ページが次のように明記しています。
CPSC electronic filing is required regardless of the value of the shipment, entry, or goods. There is no low-value or direct-to-consumer exemption.
(CPSCの電子申告は、荷物・申告・商品の価値にかかわらず必要。低価格や個人向け直送の例外は無い。)
つまり「1点だけの小さな発送だから対象外」とは言えない制度です。2025年8月のデミニミス制度撤廃以降、日本からの発送はすでに金額を問わずDDPで関税を精算する前提に変わっていますが、CPSCのeFilingも同じ方向、「金額の大小で除外される」という発想がそもそも通用しにくくなっているという点で、いま押さえておきたい変化です。
- eFilingの申告責任は、原則として輸入者(Importer of Record)にあります。ただしeBayのような越境ECの取引で、セラー・買い手・配送業者・通関業者のうち誰が輸入者に当たるかは、発送の形式(国際郵便か、商用の国際クーリエか)や契約関係によって変わり得ます
- この記事では「eBayセラーなら必ずこう扱われる」という断定はしません。利用している配送方法(CPaSSなど)の提供元や、契約している通関業者に、自分の取引でどちらが輸入者として扱われるかを確認するのが確実です
電子申告の2つの方法:都度入力と、事前登録して参照する方式
CPSC公式のeFiling案内ページでは、証明書データの送り方として2つの方式が案内されています。
①Full PGAメッセージセット:輸入申告のたびに、7項目の証明書データをその場でまとめて入力する方式です。PGAはPartner Government Agencyの略で、税関と連携して輸入品をチェックする政府機関(CPSCもその一つ)を指します。発送する製品の種類が少ない、または発送そのものが不定期なセラーに向いています。
②Referenceメッセージセット:あらかじめCPSC Product Registry(要アカウント登録)に証明書データを登録しておき、実際の申告時には登録番号を参照するだけで済ませる方式です。同じ製品を継続して発送するセラー、発送件数が多いセラーほど、最初の登録の手間を差し引いても向いています。
自分の出品が対象かどうかを確認する手順
CPSCは、自分の製品が規制対象に当たるかどうかを調べるための無料ツール「Regulatory Robot」を公式サイトで公開しています(business.cpsc.gov/robot)。製品カテゴリーや用途を選んでいくと、関連する可能性のある安全基準やルールの一覧が表示される仕組みです。
加えて、CPSC公式のeFiling案内ページには「Does eFiling Apply to Me?」という、自分の立場(輸入者・ブローカー・ソフトウェア開発者など)ごとの案内へ進めるリンクも用意されています。制度の細かい論点(少額輸入の簡易通関制度であるSection 321との関係、輸入者の定義など)はFAQページにまとまっているので、判断に迷う場合はそちらも参照してください。
Regulatory Robotなどで自分の商品が対象と分かった場合は、次の順番で準備を進めます。
①該当する安全基準を確認する ②メーカーや仕入れ先に試験報告書・証明書(CPCまたはGCC)の有無を確認する ③証明書が無ければ、メーカーに発行を依頼するか、自分で試験機関に依頼する ④証明書がそろったら、発送件数に応じてFull PGAかReferenceのどちらの方式で申告するかを決める ⑤利用している配送会社・通関業者に、実務上どちらが申告データを送るのかを確認する。
この一連の流れは、HSコードを自分で調べて出品フォームに控えておくのと似ています。一度きちんと調べて手順にしてしまえば、同じジャンルの商品を扱い続ける限り、毎回ゼロから悩む必要はなくなります。
- 自分の扱う商品が、おもちゃ・子ども用品・家具・自転車などの対象になりやすいジャンルに含まれていないか
- Regulatory Robotで、自分の商品に関連する安全基準の有無を確認したか
- 対象と分かった商品について、CPCまたはGCCの証明書をメーカー・仕入れ先から確認できているか
- 証明書が無い商品を、対象と知らないまま出品し続けていないか
- 発送件数に応じて、Full PGA方式か、Reference方式(CPSC Product Registryへの事前登録)のどちらが向いているか検討したか
- 利用している配送会社・通関業者に、自分の取引で誰が申告データを送る立場になるかを確認したか
- 「少額の発送だから対象外」と自己判断していないか