— ある日の岐阜の仕事場、朝のコーヒータイム —
おかあさんおとうさん、今度はヨーロッパの関税が変わったって本当? アメリカのデミニミス撤廃のときも大騒ぎだったって聞いたけれど、今度はEUなの?
おかあさん
おとうさん
おとうさんそうなんだ。2026年7月1日から、EUの「€150以下は関税免除」というルールが廃止された。米国に続いて、EUも「低額品でも関税がかかる」世界に切り替わったんだよ。
おかあさんええっ、それってEU向けに売ってる日本のセラーはみんな関係あるってこと?
おかあさん
おとうさん
おとうさんうん、全員関係ある。ただ、最初に言っておくと今回は「一律€3」という分かりやすい暫定ルールから始まっているから、正しく理解すれば怖い話ではないんだ。順番に見ていこう。

何が変わった?€150免税の廃止と「一律€3」

— まず事実関係から

これまでEUには、「€150以下の輸入品には関税(customs duty)がかからない」という免税ルールがありました。日本からeBayでEU圏のバイヤーに送る商品の多くはこの枠に収まっていたため、実質的に「VAT(付加価値税)だけ考えればいい」状態が続いていました。

それが2026年7月1日に廃止され、代わりに€150以下の低額品に「1品目あたり一律€3」の暫定フラット関税が導入されました。これはEUの関税制度改革(UCC改革)の一部で、2028年7月1日までの経過措置。その後は品目ごと(HSコード別)の通常関税に移行する予定です。

EU向け低額品の関税ルールの変化:2026年6月30日までは€150以下免税、2026年7月1日からは1品目あたり一律€3
図:EU向け低額品(€150以下)の関税ルールはこう変わった
— Big Change
2026年7月1日からのEU向け販売
  • €150以下の免税枠が廃止(それ以上の商品は従来どおり品目別の関税)
  • 低額品には1品目あたり一律€3の暫定関税
  • この€3は配達時にバイヤーから徴収されるのではなく、事業者側(セラーやIOSS事業者)が負担・納付する建て付け
  • 暫定措置は2028年7月1日まで。その後は品目別関税へ本格移行予定
おかあさん€3って……450円くらい? アメリカの関税の話に比べると、ずいぶん可愛い金額に聞こえるけど。
おかあさん
おとうさん
おとうさん金額だけ見ればそうなんだ。ただし注意点が2つ。①低単価の商品ほど利益に対する割合が大きくなること。€20の商品にとっての€3は15%だからね。②「誰がどう納めるか」で配送業者側の要件が変わってきていること。ここを見落とすと発送でつまずく。

VATと何が違うの?という整理

— 混同しやすいポイント

ここで混同しやすいのがVAT(付加価値税)との違いです。EU向け販売では、2021年から金額にかかわらずVATが課税されており、eBayのようなマーケットプレイス経由の販売では、eBayがバイヤーからVATを徴収してIOSS(Import One-Stop Shop)で納付する仕組みがすでに回っています。

今回変わったのはVATではなく「関税(customs duty)」の方。つまりEU向けの低額品は今後、

  • VAT:従来どおり、eBayが徴収・納付(セラーの追加作業は基本なし)
  • 関税€3:新しく発生。事業者側での負担・納付が前提

という2階建てになった、と整理すると分かりやすいです。

おかあさん — おかあさんのひとこと わたしがやっていた頃のヨーロッパ向けは、ただ荷物を送るだけでした。「関税」も「VAT」も、こちらが考える言葉ではなかったのです。覚えることが増えて大変ね、と思う一方で、ちゃんと知っている人ほど落ち着いていられるのだろうな、とも思います。

eBay公式のアナウンスと配送への影響

おとうさん
おとうさんeBayも公式にアナウンスを出していて、ポイントは3つ。「配送業者の要件を確認して」「価格と配送設定を見直して」「しばらくは配達遅延に備えて」という内容だ。
eBay公式が案内している対応ポイント
  • 配送業者の新要件を確認:SpeedPAKをはじめ、複数の配送サービスがEU向けでDDP(関税込み配送)を要求する動きあり。自分の使っている配送方法がEU向けにどう対応したかを必ず確認
  • 価格・送料設定の見直し:€3の関税負担を前提に、EU向けの価格・送料を再設計
  • 配達遅延への備え:税関・配送業者が新制度に慣れるまでは通関に時間がかかる場合がある。ハンドリングタイムや商品説明での事前案内でカバー
— 米国対応の経験がそのまま活きる

「関税前提で出品を設計する」「DDPで届けきる」「HSコードと申告価格を正確に書く」——これらは米国のデミニミス撤廃のときに、日本のセラーがひととおりやってきた対応と同じです。米国対応が済んでいるセラーなら、それをEU向けに広げるだけ。むしろ初動が早いセラーほど、対応の遅い競合との差別化になります。

日本人セラーが今やるべきこと

— Action List
EU新関税への5つの対応
  • ① EU販売比率の把握:Seller Hubで直近のEU圏(ドイツ・フランス・イタリアなど)への販売実績を確認。比率が低いなら焦る必要なし
  • ② 低単価商品の値付け見直し:€3の影響が大きい低単価帯は、EU向け価格・送料に転嫁するか、出品対象から外すか判断
  • ③ 配送方法のEU対応確認:CPaSS・クーリエ各社のEU向けDDP対応状況をチェック
  • ④ HSコード・申告価格の正確な記入:1品目€3は「関税分類ごと」にまとめて計算されるため、正確な申告がトラブル回避に直結
  • ⑤ 2028年の本格移行を頭に入れる:€3はあくまで暫定。2028年7月からは品目別関税に変わる予定なので、続報を追う習慣を
▶ 動画でも:関税ルール変更のとき、実際に何が起きるのか。オガタが経験した関税トラブルを話しています

「関税前提の世界」は、もう普通のこと

おかあさんアメリカ、そしてEU。なんだか世界中で同じ流れが起きてるんだね。
おかあさん
おとうさん
おとうさんそういうこと。もう「たまたま関税がかからない時代」には戻らない前提で考えたほうがいい。逆に言えば、関税対応はどのセラーにも平等に降ってくるから、先に淡々と対応した人が勝つ。今回のEUの件も、慌てず設計を変えるだけだよ。
— 結びに

EUの€3フラット関税は、金額としては小さな変化です。ただ、「低額品でも関税がかかる」という世界的な流れの確認という意味で、節目になる変更だと思います。

米国の関税対応とあわせて、「関税を見える化して、届けきる」設計を続けていきましょう。米国側のルールは「米国の関税:デミニミス撤廃以降のセラーが押さえる最低限」で、DDPの基本は「DDPとDDUの違い」で詳しくお話ししています。なお米国側は2026年7月24日にさらにルールが切り替わり、日本発送は合計12.5%に調整されるようになりました。こちらは「【2026年7月24日開始】アメリカの新関税で日本発送は合計12.5%へ」にまとめています。