— ある日の岐阜の仕事場、昼下がり —
おかあさんわたしがやっていた頃はね、出品してもウォッチ(Watchers)の数だけがぽつぽつ増えて、なかなか買ってはもらえなかったのよ。「見てるなら買ってよ〜」って画面に向かってよくつぶやいていたの。ああいうとき、何かできることってあったのかな?
おかあさん
おとうさん
おとうさんあるよ。それが今日の主役の「オファー(値下げ交渉)」なんだ。eBayには、バイヤーから値下げ交渉を受け付けるBest Offerと、こちらからウォッチャーに割引を送り込むSend Offerの2つの仕組みがある。とくにSend Offerは「見てるだけの人」の背中を押す道具そのもので、初心者が最初のSOLDを作るのにいちばん役立つ機能のひとつだよ。設定から交渉の返し方、英文メッセージまで、今日は全部やろう。

eBayのオファーとは:受けのBest Offer、攻めのSend Offer

— eBayのオファーとは、値下げ交渉の窓口のこと

日本のフリマアプリで値下げコメントが日常なのと同じように、eBayでも価格交渉はごく普通の文化です。eBayのオファーとは、この値下げ交渉のやり取りをする窓口のことで、方向によって2つに分かれます。Best Offer(ベストオファー)は、バイヤー側から「この値段で売って」と提案が届く受けの仕組み。出品時に「Allow offers(オファーを受け付ける)」をONにしておくと使えます。もうひとつのSend Offer(オファー送信)は、ウォッチやカート追加で興味を示したバイヤーへ、セラー側から割引価格を提案する攻めの仕組みです。

どちらも対象になるのは固定価格(Buy It Now)の出品で、オークション形式は対象外です。そして大事なことがひとつ。オファーで値引きして売れた場合、落札手数料(FVF)実際に売れた価格に対してかかります。定価ではなく成約価格ベースなので、「値引きしたのに手数料は定価分」という損はありません。

— Two Offers
Best OfferとSend Offerの違い(2026年7月時点)
  • Best Offer(受け):バイヤーが希望価格を提示してくる。1商品につき最大3回まで(多くのカテゴリ)。セラーはAccept/Decline/Counterofferの3択で対応
  • Send Offer(攻め):ウォッチ・カート追加などで興味を示した直近のバイヤー(最大30人)に、表示価格より5%以上安い価格を提案できる
  • 共通ルール:オファーの有効期限は96時間(4日)。交渉中も他のバイヤーは定価で即購入できる(在庫の取り置きはない)

値下げ交渉の受け方①:Allow offersとMinimum offerの決め方

— 設定は出品フォームのPRICING欄で30秒

Best Offerを受け付ける設定は、出品方法の記事のStep 8(PRICING)で触れたとおり、出品フォームのPRICING欄にある「Allow offers」をONにするだけです。ONにすると、次の2つの入力欄が現れます。

Minimum offerは「この金額未満のオファーは自動で断る」ライン、Auto acceptは「この金額以上のオファーは自動で承諾する」ラインです。この2本の線を引いておくと、明らかに論外な金額と、文句なしの金額には自動で対応され、自分が考えるのは中間の金額だけになります。時差のあるeBayでは、寝ている間に届いたオファーが自動処理されるこの仕組みがとても効きます。

おかあさんその2本の線、当時はどうやって決めればいいのか迷ったのよね。安くしすぎたら赤字だし、強気すぎたら誰も買ってくれない気がして…。
おかあさん
おとうさん
おとうさん基準はひとつだけ。先に損益分岐点を計算すること。仕入れ値+送料+手数料を引いて利益がゼロになる金額を出して、Minimum offerはその少し上に置く。たとえば表示価格$80で損益分岐が$58なら、Minimum offerは$60。Auto acceptは「即決されて全く惜しくない金額」、たとえば$75、という具合だね。この計算をサボってオファーを受けると、売れたのに赤字が起きる。逆に線さえ引いておけば、交渉は何も怖くないよ。
表示価格80ドル・損益分岐58ドルの実例でMinimum offerとAuto acceptの2本の線を引く図解。60ドル未満は自動で断るゾーン、60から74ドルは自分で考えるゾーン、75ドル以上は自動で承諾するゾーンの3段に分かれる
図:Minimum offerとAuto acceptの2本の線で、自分が考える範囲を絞り込む

値下げ交渉の受け方②:Accept・Counter・Declineの判断基準

— 3択の対応と「96時間」の期限

中間の金額のオファーが届くと、eBayから通知が来ます。対応はSeller HubのActive(出品中)の一覧から。オファーの付いた出品に件数が表示され、そこからAccept(承諾)/Decline(断る)/Counteroffer(逆提案)の3択で返します。オファーとカウンターオファーの有効期限は96時間(4日)で、期限が切れるか、その出品が先に売れた時点で失効します。以前は48時間でしたが、現在は4日に延びています。

Best Offerの流れの図解。バイヤーのオファーはまずMinimum offerとAuto acceptで自動判定され、中間の金額だけAccept・Decline・Counterofferの3択で対応する。カウンターオファーは双方最大5回、有効期限は96時間
図:オファーが届いてからの流れ。自分で考えるのは「中間の金額」だけ
— 迷ったらカウンター。断るのも普通の対応

判断の型はシンプルです。損益分岐より十分上ならAccept。惜しい金額ならCounterofferで打ち返す。論外ならDecline。カウンターオファーは自分とバイヤーそれぞれ最大5回まで出せるので、1回目から最安値を出す必要はありません。表示価格$100・損益分岐$70の商品に$70のオファーが来たら、$85で返してみる。バイヤーが$78で返してきたら$80で返す。この「ラリー」の途中で成立するのが、eBayのごく日常的な売れ方です。

なお、Declineを選んでも相手に失礼にはあたりません。価格交渉はゲームのようなもので、断られたバイヤーが定価で買っていくこともよくあります。ただし、返事をしないまま96時間放置するのがいちばんの機会損失です。オファーの通知が来たら、その日のうちにどれかの選択肢を返す習慣をつけてください。

おかあさんカウンターって、金額だけをポンと返すものだと思っていた。なんだか事務的というか、そっけない気がしてね。
おかあさん
おとうさん
おとうさんいいところに気づいたね。カウンターオファーには短いメッセージを添えられるんだ。「状態の良い品なので、これが精一杯の価格です」と一言あるだけで、数字だけ返すより印象がずっと良くなる。あとで英文の型を渡すから、コピペして使うといい。

攻めのSend Offer:ウォッチャーに割引を届ける

— 「見てるだけの人」にだけ届く、無駄のない値下げ

ここからが攻めの番です。商品をウォッチしたり、カートに入れたまま数日置いているバイヤーは、「欲しいけれど、あと一歩迷っている人」。Send Offerは、その人たちにだけ表示価格より5%以上安い特別価格を直接届ける機能です。全員に見える値下げと違って表示価格(定価)は変わらないので、ブランド価値を下げずに、迷っている人の背中だけを押せます。届く相手は直近で興味を示したバイヤー最大30人。誰に届いたかは互いに分からない匿名方式なので、気負う必要はありません。

Send Offerの流れの図解。バイヤーがウォッチやカート追加で興味を示すと出品がオファー送信の対象になり、Seller HubのActiveから表示価格の5%以上の割引とメッセージを設定して送信。バイヤーは96時間以内に回答する
図:Send Offerの流れ。届くのは「すでに興味を示した人」だけ
— 手順①:Activeの出品一覧から「Send offers」を開く

送り方の手順を見ていきます。Seller HubのActive(出品中)の一覧で、送りたい出品の右端にあるメニュー(▼)を開くと「Send offers」があります。興味を示したバイヤーがいる出品なら、ここからオファー送信の画面に進めます。「Eligible to send offers(オファー送信可能)」で絞り込めば対象の出品だけを一覧でき、複数選んでまとめて送ることもできます。同じメニューには「Add Best Offer」もあり、出品時にAllow offersを入れ忘れた商品も、ここから後付けでオファー受付をONにできます。

— 手順②:割引とメッセージを設定する

「Send offers」を開くと設定画面が出ます。決めることは実質2つだけ。Discount(割引)とMessage(メッセージ)です。割引の指定方法はTypeのプルダウンでPercent off(何%引き)・Amount off(何ドル引き)・Offer amount(オファー価格を直接指定)の3種類から選べます。迷ったらPercent offで10%前後が使いやすい形です(最低ラインは5%)。画面の右側には、選んだ出品と「Eligible(送信対象)」の件数が表示されるので、送れる相手がいるかもここで分かります。

Message欄には最初から「Here's your chance to get this item at a great price!(この商品をお得な価格で手に入れるチャンスです!)」という定型文が入っていて、最大230文字まで書き換えられます。そのままでも送れますが、次の章の英文例のように一言添えると印象が良くなります。また「Allow counteroffers」にチェックを入れると、バイヤーがこちらのオファーに逆提案(カウンター)を返せるようになり、交渉の入口が広がります。

— 手順③:自動送信(Send automated offer)を仕込んで送る

「Send automated offer」にチェックを入れると、今後その出品に興味を示したバイヤーにも同じ内容のオファーが自動で送られます。期間はDurationのプルダウンで7日・30日・60日・90日・1年から選択。毎日手動で送る手間が消えるので、初SOLDを作りたい時期は「30日」あたりで仕込んでおくのが手軽です。設定できたら送信ボタンを押すだけ。完了すると「Offers sent」の緑のバナーが表示され、自動オファーが有効になったことが確認できます。

— 運用のコツ:ためらわず送る

Send Offerは送っても費用はかからず、断られてもペナルティはありません。だから初SOLDを作りたい時期は、ウォッチャーが付いたら送る、を習慣にしてためらわず使うのが正解です。割引率は最低ラインの5%だと「気持ち程度」に見えやすいので、利益が残る範囲で10%前後を目安に、商品ごとに調整します。ここでも受けの設定と同じで、先に損益分岐を知っていることが前提です。なお、カートに入っている商品は、入れられてから2日以上経つとオファー送信の対象になります。「カートに入れたのに買わない人」こそ、Send Offerがいちばん刺さる相手です。

おかあさんでも、受けても値引き、攻めても値引きでしょう? あの頃、オファーばかり使っていたら利益がどんどん薄くなるんじゃないかって、少し不安だったのよ。
おかあさん
おとうさん
おとうさんだから「オファーで下げる分を織り込んで値付けする」のが実務なんだ。交渉されることを前提に、表示価格には最初から1割ほどの余白を持たせておく。それに始めたばかりの時期は、利益の額よりSOLDの数そのものが資産になる。販売実績が付けば検索でも有利になるし、リミットアップにもつながる。最初の数件は「利益より実績」と割り切って、オファーを積極的に使うのが結局いちばんの近道だよ。

そのまま使える英文メッセージ例

— 型は2つだけ覚えれば足りる

Send Offerとカウンターオファーには短いメッセージを添えられます。長文は不要で、感じの良い定型文で十分です。そのまま使える型を2つ置いておきます(英語テンプレート集もあわせてどうぞ)。

— ① Send Offerに添えるメッセージ

Thank you for your interest in this item. I would like to offer you a special price. This offer is valid for a limited time only, so please don't miss it. Feel free to ask me any questions.
(この商品に興味を持っていただきありがとうございます。特別価格をご提案します。期間限定のオファーですので、お見逃しなく。ご質問があればお気軽にどうぞ。)

— ② カウンターオファーに添えるメッセージ

Thank you for your offer. This item is in very good condition, so this counteroffer is the best price I can accept. I hope we can make a deal.
(オファーをありがとうございます。状態の良い商品のため、このカウンターオファーがお受けできる精一杯の価格です。お取引できれば嬉しいです。)

初SOLDを作るオファー戦略チェックリスト

— 「待つ出品」から「動かす出品」へ

出品しただけで待つのをやめて、オファーを受けて・送って・打ち返す。この一連の動きができるようになると、出品は「置いておくもの」から「動かすもの」に変わります。SOLD積み上げ戦略Promoted Listingsにオファーを組み合わせれば、初心者が最初の数件を作る道具は揃います。最後に、今日の要点をチェックリストにまとめます。

オファーを使い始める前のチェックリスト
  • 商品ごとに損益分岐点(仕入れ+送料+手数料で利益ゼロの金額)を計算したか
  • 出品時にPRICING欄のAllow offersをONにし、Minimum offer(自動拒否ライン)を必ず入れたか
  • Auto acceptには「即決されて惜しくない金額」を入れたか
  • オファーの通知が来たら96時間待たずその日のうちにAccept・Counter・Declineのどれかを返しているか
  • ウォッチャーが付いた出品にSend Offerを送っているか(目安は利益が残る範囲で10%前後の割引)
  • オファーやカウンターに短い英文メッセージを添えているか
  • 値付けの時点で、交渉で下がる分の余白(1割ほど)を織り込んだか
おかあさんウォッチャーは「冷やかし」じゃなくて「あと一押しのお客さん」だったのね。あの頃これが分かっていたら、もっと気楽にオファーを送れたのに。これから始める人には、最初からどんどん使ってほしい。
おかあさん
おとうさん
おとうさんその感覚をつかめた人は、もう「待つだけの出品者」じゃないよ。値下げ交渉は削られる場面じゃなくて、こちらから売りに行ける唯一の場面。損益分岐という物差しさえ握っていれば、あとは何回打ち返しても怖くない。最初のSOLDの多くは、こうやって「交渉の途中」で生まれるんだ。今これを読んでいる人は、僕らが遠回りした分をショートカットできるはずだよ。
おかあさん — おかあさんのひとこと 値切られると、最初はちょっと悲しい気持ちになったものです。でも「損しない下限」さえ決めておけば、交渉はお客さんとの会話。断ってもいい、と分かってから、ずいぶん気持ちが楽になったのを覚えています。