先に結論:守りの設定とは「守れる約束だけをバイヤーに見せる」こと
結論から書きます。出品ページには、商品そのものの情報のほかに、取引の条件=バイヤーへの約束が並んでいます。何営業日以内に発送するか(ハンドリングタイム)。どの国へ発送するか(発送する国と発送除外国)。そして休みの間、その約束をどう扱うか(Time Away)。
この3つに共通する考え方は1つだけです。守れる約束だけを画面に出す。発送が3日かかる生活なら3営業日と書く。送りたくない国へは最初から売らない。休むなら「休みます」と設定で伝える。逆に、守れない約束を出したまま生活のほうで頑張ろうとすると、発送遅延・未着トラブル・休暇中の事故といった形で、あとから必ず請求が来ます。
すでに詐欺・悪質バイヤー対策の記事で、「誰に売るか」を決めるBuyer requirements(バイヤーの条件設定)とブロックリストを説明しました。今日の3つはその続きで、「いつまでに・どこへ・休みの間はどうするか」を決めます。合わせて、出品初日の守りの設定がひと通り完成します。
- 守りの設定とは「守れる約束だけをバイヤーに見せる」こと。約束に生活を合わせるのではなく、生活に約束を合わせる
- ハンドリングタイムは理想ではなく実測で決める。数え方は「支払い〜配送業者のスキャン」の営業日で、締切は最終日の23時59分59秒
- 短い日数は配達予定日を早く見せるが、守れない短さは発送遅延(Late shipment rate、基準3%以下)に直結する。月30件なら1件の遅れで3.33%
- 発送除外国は「追跡が切れる・配送が止まっている・手続きが重い」場所を先に閉じる設定。あとからいつでも開けられる
- 除外国はBuyer requirementsと連動し、除外国の住所のバイヤーの入札・購入を自動で止める土台になる
- Time Awayは販売を続ける型(最大15日・配達予定日が自動で延びる)と止める型(最大30日・固定価格出品が検索に出なくなる)の2択。事前にスケジュールできる
3つの設定は3つの約束:いつまでに送るか・どこへ送るか・休みをどう伝えるか
この3つをひとまとめに扱うのには理由があります。どれも売れる前に決めるもので、どれも売れた後の事故を防ぐものだからです。
タイトルや写真、Item Specificsといった攻めの設定は、直したければ明日直せます。しかし守りの設定は、事故が起きてから直しても、起きた事故には間に合いません。発送が遅れてから「ハンドリングタイムが短すぎた」と気づく。送れない国から注文が入ってから「除外していなかった」と気づく。旅行先で売れてから「休暇の設定を知らなかった」と気づく。どれも、出品前の数分で防げたものです。
そして3つは役割を分け合っています。いつまでに送るかを決めるのがハンドリングタイム。どこへ送るかを決めるのが発送する国と発送除外国。休みの間の約束をどう扱うかを決めるのがTime Away。前回のBuyer requirementsが誰に売るかでしたから、これで「誰に・どこへ・いつまでに・休みの間は」の4つがそろいます。
ハンドリングタイム:発送までの日数は理想ではなく実測で決める
ハンドリングタイムは「バイヤーの支払いを受け取ってから、配送業者が荷物を受け付けてスキャンするまで」の営業日数です。売れた後の流れの記事で詳しく書いたとおり、ポイントは3つあります。数えるのは営業日で、土日は原則入りません(設定で土日を営業日に含めることもできます)。締切は最終日の23時59分59秒。そしてゴールは自分が発送した瞬間ではなく、配送業者側のスキャン(acceptance scan)です。窓口に出しても、その日のスキャンに間に合わなければ翌日扱いになり得ます。
守れなかった場合に何が起きるかも、はっきりしています。Late shipment rate(発送遅延率)という成績に記録され、基準は3%以下です。これを読者の数字に翻訳すると、月30件売る人は1件の遅れで3.33%。つまり毎月ほぼ1件も落とせません。逆に、期限内のスキャンと有効な追跡番号さえあれば、飛行機や税関の遅れで配達が遅れてもセラーの責任にはなりません。締切として守るべきはこの1本だけです。成績の全体像はセラーレベルの記事にまとめてあります。
公式の案内では2営業日以内が推奨とされ、さらに当日・1営業日ハンドリングは(30日返品などの条件とあわせて)Top Rated Plusという優遇の条件のひとつにもなっています。これが建前側です。
実務側の決め方は1つで、自分の発送を実測することです。注文が入ってから、梱包し、ラベルを作り、荷物を差し出してスキャンされるまで、自分の生活の中で実際に何日かかるか。平日は仕事がある人なら、朝の発送に回せるのは翌々日かもしれません。無在庫と有在庫の記事でも書いたとおり、仕入れてから送る形なら仕入れ日数も足し算に入ります。想像ではなく実測で決めて、実測が縮んだら設定も縮める。これが結論です。
最初の目安まで言えば、本業の合間に発送する人は2〜3営業日からが現実的です。1〜2か月やってみて一度も締切に追われなかったら、1日縮める。この繰り返しなら、成績を傷つけずに配達予定日だけが早くなっていきます。
発送除外国:発送しない国を先に決めておく
次は「どこへ送るか」です。eBayでは発送先の国を自分で選べて、発送しない国・地域をリスト形式で除外できます(Exclude shipping locations)。設定は出品ごとではなく、Business Policiesの記事で説明したShipping Policy(配送ポリシー)にまとめて持たせて、全出品に適用するのが基本です。出品フォームのSHIPPING欄では、発送除外国を設定済みのShipping policyを選ぶだけになります。ハンドリングタイムと発送除外国はポリシーの中に含まれるため、出品ごとに設定し直す必要はありません。同じ画面のItem originのCountry of Origin欄には、日本製ならJapanを選びます。
どこを除外するかは、感覚ではなく理由で決めます。よく除外される場所は、理由がおおむね3つの型に収まります。
① 追跡が切れる・届けられない場所。米軍関係の宛先(APO/FPO)は追跡付きの発送ができず、私書箱(PO Box)宛てはFedExやDHLなどのクーリエが配達できないことがあります。荷物が生きていても、追跡が切れた時点で「証明できない未着」に近づくので、守りとしては入口で閉じるのが安全です。
② 配送が止まっている・不安定な場所。ロシア・ウクライナのように配送業者側が引き受けを止めている国は、そもそも約束を果たす手段がありません。③ 手続きが重い場所。ドイツのように包装材の登録制度(LUCID)への対応が求められるなど、国側の制度対応が必要になる場合もあります。このほか、実際にやってみて未着やトラブルが続いた地域を自分の判断で足していくのは、まっとうな運用です。具体的にどの国を選ぶかは、Business Policiesの記事に僕が実際に設定している除外リストを公開しているので、最初はそのまま参考にしてください。
1つ補足すると、これは商品側の規制の話とは別物です。ワシントン条約の素材のように「そもそも輸出できないもの」は、出品禁止商品の記事で書いたとおり国の選び方では解決しません。発送除外国は「送れるものを、送れる場所にだけ売る」ための設定です。
発送除外国には、もう1つ大事な役割があります。詐欺・悪質バイヤー対策の記事で説明したBuyer requirements(バイヤーの条件設定)には「配送先の住所が発送除外国にあるバイヤーの入札・購入を自動で止める」という項目がありました。つまり、除外国リストはこの自動ブロックの土台データでもあります。
除外国を設定しただけだと、除外国の住所を持つバイヤーからのオファーやメッセージ経由の注文が入り込む余地が残りますが、Buyer requirements側のチェックを入れることで、入口そのものが閉じます。「除外国リストを作る→Buyer requirementsで自動ブロックをオンにする」の2つで1セットと覚えてください。
Time Away(休暇設定):休む予定は根性ではなく設定で乗り切る
Time Awayの設定は、アカウント設定のTime Away settingsから行います。開始日と終了日を指定して、モードを選ぶだけです。モードは2つあります。
① 販売を続ける型(Allow item sales)。出品は表示されたまま売れ続け、バイヤーには休暇中であることが表示され、配達予定日が休暇分だけ自動で後ろに延びます。設定できる期間は最大15日。数日の帰省や旅行で、発送だけが遅れる場合に向きます。売上は止まりません。
② 販売を止める型(Pause item sales)。固定価格の出品が検索結果に出なくなり、購入もできなくなります。期間は最大30日。発送も対応も一切できない長い休みに向きます。注意点は3つで、反映まで数時間かかること、オークション形式の出品は非表示にならないこと(停止期間と重なるオークションは事前に終わらせておく)、そして再開後に商品が検索に出る状態へ戻る、という仕組みであることです。
どちらの型でも、手数料の請求や、バイヤーからの問い合わせに答える責任は続きます。完全に電波の届かない場所へ行くなら、販売を止める型+自動返信メッセージの設定が現実的です。
細かい仕様も押さえておきます。まず、設定は前もって予約できます。休みが決まった時点で入れておけば、当日の慌ただしさから1つ作業が消えます。公式は開始前日までの設定を勧めています。開始後にできる変更は「終了日を早める」か「終了する」だけで、期間を後ろに延ばすことはできません。迷ったら長めに取って、早く帰れたら終了する使い方が安全です。
また、販売を続ける型の「配達予定日の自動延長」には対象外があります。オファーの承諾待ちの注文やSecond Chance Offer、デジタル商品などは自動延長されません。休みに入る前に、出しっぱなしのオファーを整理しておくと、この穴はふさげます。
最後に、俗説の整理を1つ。「Time Awayを使うとアカウントが不利になるから、使わずに根性で乗り切るべきだ」という話を見かけることがありますが、公式にそのような説明はありません。公式が書いているのは、販売を止める型の間は固定価格出品が検索に出ない、という当然の仕組みまでです。はっきりしているのは逆で、設定せずに休んで発送が遅れれば、発送遅延として確実に成績が悪化します。休むなら、設定してから休む。これが守りの結論です。
出品初日にやる守りの設定チェックリスト
この記事の内容を、作業の順番に置き直します。
出品を始める日にやること。自分の発送を実測して、守れるハンドリングタイムをShipping Policyに設定する。同じポリシーに発送除外国リストを作る。そして前回の記事のBuyer requirementsで、除外国の住所のバイヤーを自動ブロックする項目をオンにする。ここまでで、「誰に・どこへ・いつまでに」の約束がそろいます。
休みが決まった日にやること。休みの長さと発送可否でTime Awayのモードを選び、前日までに予約する。オファーの出しっぱなしを整理する。長い休みなら自動返信も設定する。
続けながらやること。実測が縮んだらハンドリングタイムを縮める。配送に自信がついたら除外国を開けて売り先を広げる。守りの設定は一度きりの作業ではなく、実力に合わせて約束を更新していく設定です。
- 発送までの日数を実測した(注文→梱包→差し出し→スキャンまで。想像で決めない)
- ハンドリングタイムを守れる日数で設定した(本業の合間なら2〜3営業日から。慣れたら縮める)
- 締切の数え方を理解した(営業日・最終日23:59:59・配送業者のスキャンが基準)
- 発送除外国リストをShipping Policyに設定した(APO/FPO・PO Box・配送停止国など理由のある場所から)
- Buyer requirementsで除外国の住所のバイヤーを自動ブロックにした(前回の記事の設定と2つで1セット)
- Time Awayの場所と2つのモードを確認した(続ける型=最大15日/止める型=最大30日・反映に数時間)
- 休みが決まったら前日までに予約する、と決めた(開始後は「早める・終える」しかできない)
- 休み明けの見直しも習慣にした(実測が縮んだら日数を縮め、自信がついたら除外国を開ける)