— 2026年7月28日の午後、岐阜の仕事場 —
おかあさんわたしが出品をしていた頃、いちばん時間がかかったのは写真だった。食卓の上で何十枚も撮っては消して、暗いような気がしてやり直して。ほかのセラーさんのお店みたいにきれいに撮れなくて、うちにはいいカメラが無いからだ、と思い込んでいたのを覚えている。
おかあさん
おとうさん
おとうさん先に言ってしまうと、カメラのせいじゃないんだ。今のスマホのカメラは、eBayの商品撮影には十分すぎる性能がある。差がつくのはカメラの値段じゃなくて、eBayの写真ルールを知っているか、撮るものが決まっているか、光の使い方の3つ。今日はその順番で、全部話すよ。

先に結論:機材より、ルールと撮る順番

— 買い物より先にやることがある

結論から書きます。商品写真のために最初に買うべき機材は、ありません。スマホと、窓際の明るい場所と、白い背景(模造紙や大きめの白布で十分)があれば始められます。撮影ブースや照明は、売れてから考えれば間に合います。

それより先に押さえるべきなのは、eBayが決めている写真のルールと、1商品につき何を撮るかのリストです。ルールを知らないと、良かれと思ってやった加工が検索順位を下げます。リストが無いと、毎回「何となく」で撮って、あとから「あの角度が無い」と撮り直しになります。

— Answer
この記事の結論
  • 機材はスマホで十分。自然光+白背景から始める
  • 写真は1出品24枚まで無料。最低500×500px、推奨は約1600×1600px(拡大表示が働く)
  • 文字・ロゴ・透かしを写真に入れない。検索結果での表示に影響するとeBayが公式に明記している
  • 中古品にメーカーの画像(ストックフォト)は使えない。現物を自分で撮る
  • 撮るものは決まっている。正面・背面・側面・上からの4アングル+傷などの状態+付属品+サイズ感
  • 傷は隠さず、大きく明るく撮る。それが返品と悪い評価をいちばん減らす

eBayの写真ルール:枚数・サイズ・やってはいけないこと

— 公式の要件を先に押さえる

まず、eBayが公式に決めている要件です。写真は1出品につき24枚まで無料でアップロードできます。サイズは最低500×500ピクセル、推奨は約1600×1600ピクセル。1600px程度あると、バイヤーが写真を拡大してすみずみまで確認できるようになります。ファイル形式はJPEG・PNG・WEBP・HEICなど主要なものに対応していて、1枚あたり12MBまで。スマホで普通に撮った写真なら、サイズも形式もそのまま通ります。

次に、やってはいけないことです。ここは知らずに踏む人が多いところです。

写真に文字やロゴ、透かしを入れてはいけません。「送料無料!」の文字入れ、自分のショップロゴ、コピーライト表示。日本のフリマアプリでは普通の演出ですが、eBayは「バッジ・ロゴ・著作権表示・透かしなどを画像に加えると、検索結果での出品の表示に影響することがある」と公式に明記しています。つまり、良かれと思った加工が検索順位を下げる側に働くのです。写真は商品だけを写します。

中古品に、メーカーの公式画像やカタログ写真(ストックフォト)を使ってはいけません。これも公式のルールです。中古品のバイヤーが知りたいのは「この個体の状態」であって、新品時の姿ではありません。加えて、メーカーの画像の流用は知的財産(VeRO)の面でも危険です。写真は必ず、手元の現物を自分で撮ります。

eBayの写真ルールを4つ整理した図解。1つめ、写真は1出品24枚まで無料で、最低500×500ピクセル、推奨は約1600×1600ピクセル。1600ピクセル程度あるとバイヤーが拡大してすみずみまで確認できる。2つめ、文字・ロゴ・透かしを写真に入れない。検索結果での表示に影響するとeBay公式が明記しており、送料無料の文字入れやショップロゴは順位を下げる側に働く。3つめ、中古品にメーカーの画像やカタログ写真は使えない。バイヤーが知りたいのはこの個体の状態で、公式画像の流用は知的財産の面でも危険。4つめ、1枚目の写真は商品全体を正面から、白系の無地の背景で撮る。1枚目は検索結果に並ぶ商品の顔になる
図:ルールは4つだけ。特に「文字を入れない」は日本の感覚と逆なので注意
おかあさん文字を入れてはいけない、というのは意外ね。わたしの頃も、目立つように「美品!」と写真に書き込んでいる方をよく見かけたもの。ああいう飾りつけは、こちらでは丁寧なお店の証のように見えるのに、eBayでは順位を下げる側に働く……ということになるのかな。
おかあさん
おとうさん
おとうさんそういうことになるんだ。eBayは写真を「商品そのものの記録」として扱っていて、飾りは情報の邪魔だと考えている。だから基準も「きれいか」じゃなくて「正確に写っているか」。これは初心者にとって朗報なんだよ。デザインのセンスは要らなくて、商品だけを、明るく、ありのまま写せばいいんだから。次は「何を撮るか」を決めてしまおう。ここが決まると、撮影は迷わなくなる。

何を撮るか:必須4アングル+状態+付属品

— 撮るものはリストで決めておく

商品を前にしてから「どう撮ろうか」と考えるのではなく、撮るもののリストを先に決めておきます。基本のリストはどの商品でもほぼ同じです。

まず、必須の4アングル。正面──商品全体が入った、いちばん状態の良い1枚。これが検索結果に並ぶ「商品の顔」になります。背景は白系の無地で、商品以外は写しません。②背面──裏側の状態、ラベル、シリアル番号。③側面──厚みと奥行き。④上から──全体の形と、セット内容を一度に見せられる角度です。

次に、状態を伝える写真。傷・スレ・汚れ・日焼けなど、マイナス要素こそ近づいて撮ります(詳しくは後の章で)。カメラやレンズなら、レンズ内のクモリやカビの有無が分かるカットも要ります。動く商品なら、電源が入った状態の1枚が信頼につながります。

最後に、付属品とサイズ感。箱・説明書・ケーブル・保証書などの付属品は、1枚に並べて撮ります。「写真に写っているものがすべて」という原則で見られるので、付属するものは必ず写し、付属しないものは写しません。大きさの分かりにくい商品は、定規やコインと一緒に撮ると誤解を防げます。

この基本リストで7〜10枚。枠は24枚あるので、まだ半分以上残っています。残りは商品のジャンルに応じて、バイヤーが気にする場所に使います。売れるものの記事で書いたとおり、日本のセラーの強みは「中古の状態の良さ」です。その強みは、写真の枚数でしか証明できません。

eBay商品写真の撮影リストを3段階で整理した図解。1段目は必須の4アングル。商品全体が入った正面、裏側の状態やラベルが分かる背面、厚みと奥行きが分かる側面、全体の形とセット内容を見せる上からの4枚で、正面の1枚が検索結果に並ぶ商品の顔になる。2段目は状態を伝える写真。傷・スレ・汚れなどのマイナス要素こそ近づいて大きく撮り、動く商品は電源が入った状態も撮る。3段目は付属品とサイズ感。箱・説明書・ケーブルなどの付属品は1枚に並べ、写真に写っているものがすべてという原則で付属しないものは写さない。大きさが分かりにくい商品は定規やコインと一緒に撮る。下部の補足として、基本リストで7〜10枚、枠は24枚あるので残りはバイヤーが気にする場所に使う
図:この順番で撮れば、撮り直しも「あの角度が無い」も起きない

どう撮るか:自然光と白背景で十分

— 場所と時間で、照明は代わりになる

撮り方で差がつくのは、腕前ではなくです。そして良い光は、買わなくても手に入ります。

場所は窓際、時間は日中。直射日光ではなく、レースのカーテン越しくらいの柔らかい光がいちばんきれいに写ります。光は商品の斜め前か横から当たる位置に商品を置き、影が強く出るときは、反対側に白い紙を立てて光を返してやると影が薄まります。

背景は白の無地。模造紙を壁から机へゆるくカーブさせて敷けば、境目のない背景になります。eBay公式も、基本は白系の背景を勧めています(ジュエリーのような反射の強い商品だけは、濃い色の背景のほうが映えることがあります)。

スマホ側の設定は3つだけ。①グリッド線を表示して水平を取る。②画面を長押しして明るさを固定(AE/AFロック)し、少し明るめに調整する。③レンズは標準の1倍を使う(広角0.5倍は形が歪みます)。フラッシュは色が不自然になるので使いません。手ブレが気になるなら、数千円のミニ三脚を最初の投資にしてもいいでしょう。撮った写真は、出品フォームのPHOTOS & VIDEO欄へスマホからそのままアップロードするか、PCへ送ってから上げます。

スマホ撮影のチェックリスト
  • 窓際・日中・柔らかい光で撮る(直射日光とフラッシュは使わない)
  • 白い無地の背景に商品だけを置く(模造紙をカーブさせると境目が消える)
  • グリッド線ONで水平垂直を取る
  • 長押しで明るさを固定し、気持ち明るめに
  • レンズは1倍。広角は歪むので使わない
  • 影が強いときは白い紙を反対側に立てる
おかあさんわたしは夜、家事が終わってから台所の電灯の下で撮っていたの。だから何度撮っても黄色っぽくて、暗かったのね。道具が足りないのではなくて、撮る時間と場所が合っていなかった……ということになるのかな。
おかあさん
おとうさん
おとうさんまさにそれなんだ。夜の室内灯は光が弱いうえに色が偏るから、どんなカメラで撮っても黄色く暗くなる。撮影だけ週末の昼にまとめるとか、出品作業と撮影を別の日に分けるとか、段取りを変えるだけで写真は見違えるよ。おかあさんの写真に足りなかったのは、機材でも腕でもなくて、昼の窓際だったんだ。

傷は隠さない。大きく、明るく撮る

— マイナスの情報こそ、写真の主役にする

最後に、いちばん大事な話をします。傷・汚れ・欠けは、隠さずに撮ります。それも、遠くから小さくではなく、近づいて、明るく、ピントを合わせてです。

もったいなく感じるかもしれませんが、順序立てて考えると答えは1つです。傷を写真に載せて買ったバイヤーは、届いた商品の傷を見ても驚きません。納得して買っているからです。逆に、傷を隠して売れたときは、届いてから必ず気づかれます。その先にあるのは「説明と違う」という返品リクエストや悪い評価で、返送料や返金で失う金額は、傷を正直に載せて少し安く売る差額より、ほぼ確実に大きくなります。

さらに、正直な写真は争いになったときの証拠でもあります。「商品説明と違う」と申し立てられたとき、セラーを守るのは出品時の写真と説明の正確さです。すみずみまで写した写真は、売るためだけでなく、守るためにも働きます。

書き方の面では、傷の写真にはCondition description(状態の説明文)を添えて、どこにどんな傷があるかを言葉でも伝えます。「写真の3枚目に写っているスレ」のように、写真と説明文を対応させると親切です。

— Point
正直な写真は、損ではなく保険
  • 傷を見て買ったバイヤーは届いてから驚かない。返品と悪い評価がいちばん減る
  • 隠した傷は必ず届いてから見つかる。返送料と返金は、正直に売る差額より高くつく
  • すみずみまで写した写真は、「説明と違う」と申し立てられたときの証拠になる
  • 傷の写真には状態の説明文を対応させる(どこに・どの程度・何枚目の写真か)
この記事の要点
  • 機材はスマホで十分。最初の投資は不要、あるならミニ三脚程度
  • 公式ルールは24枚無料・最低500×500px・推奨1600×1600px。スマホの写真ならそのまま通る
  • 文字・ロゴ・透かしは入れない(検索結果での表示に影響と公式明記)。中古品にメーカー画像は使えない
  • 撮るものは4アングル+状態+付属品+サイズ感で7〜10枚。残りの枠は状態の良さの証明に使う
  • 撮り方は昼の窓際+白背景+1倍レンズ+明るさ固定。夜の室内灯では撮らない
  • 傷は近づいて明るく撮り、状態の説明文と対応させる。正直な写真は売る力であり、守る証拠でもある

写真は最初の信頼をつくる

— 結びに

海外のバイヤーから見ると、日本のセラーの商品は「状態が良く、説明が正確」という信頼があります。その信頼を、個々の出品で目に見える形にするのが写真です。明るく、すみずみまで、正直に。この3つを守った写真は、高いカメラで撮った雰囲気の良い写真より、確実に売る力があります。

今日撮るところから始めるなら、順番はこうです。昼の窓際に白い紙を敷き、リストどおりに4アングルと状態と付属品を撮って、出品フォームに並べる。タイトルItem Specificsが検索で見つけてもらうための入力なら、写真はクリックされたあと、買うかどうかを決める材料になります。

おかあさんわたしはずっと、上手に撮れないのは道具と腕のせいだと思って、写真のたびに小さくなっていた。でも今日の話は、昼の窓際と白い紙と、傷を隠さない気持ちがあればいい、というのだもの。それなら、あの頃のわたしにもできたはずね。ちょっと悔しいくらい。
おかあさん
おとうさん
おとうさんできたはずだし、これから始める人は今日からできる。まとめるよ。スマホで撮る。ルールは24枚・1600px・文字入れ禁止・中古にメーカー画像禁止。撮るものは4アングル+状態+付属品。昼の窓際と白背景。傷は大きく明るく。機材のカタログを眺める時間があったら、窓際に白い紙を1枚敷くほうが先だよ。
おかあさん — おかあさんのひとこと 夜の台所で、何十枚も撮り直していた頃のわたしは、写真が下手なのは自分に何かが足りないからだと思っていました。足りなかったのは、昼間の光と白い紙だけだったのですね。それから、傷を隠したくなる気持ちをこらえること。きれいに見せようとするより、ありのままを明るく写すほうが、遠い国のバイヤーさんには誠実さとして届くのだそうです。これから写真を撮る方は、どうか道具を買いに行く前に、お天気のいい日の窓際へ。それだけで、昨日までとは違う写真になりますから。