売れてから入金までの全体像
細かい操作に入る前に、全体の地図を見ておきます。1件の取引は、おおよそ次のように進みます。
図を見ていただくと分かるとおり、セラーが能動的に作業するのは「注文を確認する」から「追跡番号をアップロードする」までの4つです。そこから先は、荷物が飛行機に乗って税関を通り、バイヤーの手元に届くのを待つ時間になります。
初めての方が消耗しやすいのは、この後半で「何かしなければいけないのでは」と落ち着かなくなることです。実際には、後半でやることはほとんどありません。追跡が動いているかを一度見るだけです。前半の4つをきちんと済ませてあれば、後半は待つのが仕事になります。
- 注文を確認する(Seller Hub の Orders → Awaiting shipment に入っている)
- お礼のメッセージを送る(任意。2行で足りる)
- 梱包して、インボイスを付けて、発送する(ハンドリングタイム内に)
- 追跡番号をアップロードする(これが発送通知になる)
- あとは待つ。到着したら評価が付き、売上は別のタイミングで入金される
締切は2つある。混ぜて考えない
ここがこの記事でいちばんお伝えしたい部分です。売れた後には、性質のまったく違う締切が2つあります。
ひとつめはハンドリングタイム。出品時に自分で設定した「注文から何営業日以内に発送するか」の日数です。これは100%自分の管理下にある締切で、守れなければ自分の責任として記録されます。
ふたつめは配送予定日(Estimated delivery)。バイヤーの画面に「◯月◯日ごろ到着」と表示されている日付です。こちらは飛行機の遅れや税関の混雑で動くもので、自分ではどうにもできない締切です。
この日数の数え方は、意外と正確に理解されていません。eBayの公式説明では、ハンドリングタイムは支払いを受け取ってから、配送業者が荷物をスキャン(acceptance scan)するまでの営業日数とされています。ポイントは3つです。
ひとつめは営業日で数えること。土日祝日は原則として日数に含まれません。金曜の夜に売れて1営業日の設定なら、期限は月曜の終わりまでです。ふたつめはその日の23時59分59秒までが期限であること。1営業日の設定で月曜に売れたなら、火曜の終わりまでに間に合えば遅延にはなりません。
三つめが、実務ではいちばん大事です。基準になるのは「郵便局のカウンターに出した瞬間」ではなく配送業者側のスキャンです。夕方の締め切り後に持ち込むと、スキャンが翌日付になることがあります。期限ぎりぎりの日は、午前中に出しておくのが安全です。
- Late shipment rate(配送遅延率):基準は3%以下。ハンドリングタイムを超えて発送・追跡アップロードした取引がここに乗る
- 月30件を売っている人が1件遅れると 1÷30=3.3%。たった1件で基準を超えてしまう計算になる
- 米国向けの取引では、期限内にアップロードされ有効と確認された追跡が95%以上あることが優良セラー(Top Rated Seller)の条件のひとつ
- だからハンドリングタイムは「頑張れば間に合う日数」ではなく「必ず間に合う日数」で設定する。詳しくはセラーレベルとサービスメトリクスへ
発送するまでの4ステップ
商品が売れると、eBayからメールとアプリの通知が届きます。作業の起点はSeller Hub の「Orders」タブです。その中の「Awaiting shipment」(発送手続き待ち)に、これから発送すべき注文が並んでいます。
ここで最初に見るのは3つだけです。①どの商品が売れたか ②送り先の住所 ③ハンドリングタイムの期限がいつか。特に住所は、この時点で一度ざっと目を通しておきます。国名と郵便番号が明らかにおかしい、部屋番号が抜けていそう、といった違和感はここで気づけると後が楽です。
なお、支払いについて心配する必要はありません。eBayではバイヤーの支払いが済んでから注文が Awaiting shipment に入ってくるので、「入金を確認してから発送する」という手順は不要です。
必須ではありませんが、私はおすすめしています。理由は礼儀というより実務的なもので、「連絡が取れる相手だ」と最初に示しておくと、後で何かあったときに話が早いからです。届かない・傷があった、といった場面で、いきなりケースを開かれるか、まずメッセージが来るかの差はここで決まります。
内容は2行で足ります。ご注文ありがとうございます、いつごろ発送します。これだけです。毎回書く必要はなく、定型文をコピーして使い回します。言い回しはバイヤー対応の英語テンプレート集のものをそのまま使ってください。
Thank you for your purchase! I will pack your item carefully and ship it within my handling time. I will send you the tracking number as soon as it is dispatched.
(ご購入ありがとうございます。丁寧に梱包し、ハンドリングタイム内に発送いたします。発送しましたら追跡番号をお知らせします。)
梱包そのものは梱包の基本に譲りますが、国内の取引と決定的に違うのが書類です。国際発送では、荷物に何が入っていて、いくらのもので、どこで作られたものかを申告する書類(インボイス)が要ります。
ここで書く内容は、後の関税の計算に直結します。特にCountry of Origin(原産国)は「発送元」ではなく「製造国」です。日本から送るからといって、中国製の商品にJapanと書いてはいけません。米国向けは2025年10月17日から関税をセラーが負担するDDPが必須になっていますから、この申告がそのまま自分のコストになります。考え方はDDPとDDUの違いにまとめてあります。
どの業者で送るかは、重さ・価格・宛先で決めます。判断の目安は国際配送の基本に、ラベル作成を楽にするツールは配送ツールの選び方にあります。ラベルをeBayの注文情報から自動で作れるツールを使うと、住所の打ち間違いという事故がまるごと消えるので、件数が増えてきたら早めに導入してください。
発送が終わったら、追跡番号がeBayに登録されます。配送ツールを使っていれば、この登録は発送と同時に自動で行われます。手作業の場合は、Awaiting shipment の一覧から対象の注文を選んで追跡情報をアップロードします。どちらの場合も、登録されると注文は「Paid and shipped」(発送済み)のタブへ移動します。CPaSSを使っている場合は、日本語画面で「発送手続き待ち」から「輸送中/CPaSS 出荷」のタブへ移ります。
ここで大事なのは、追跡番号のアップロード=発送通知だということです。別々の作業ではありません。追跡番号を入れれば、バイヤーには発送された旨が通知され、追跡画面も見られるようになります。逆に言えば、実際に発送していても、アップロードしていなければeBay上は未発送のままです。
追跡番号は、手で打たない
追跡番号まわりの失敗は、よく「うっかりミス」として語られます。キャリア名を選び間違えた、番号を打ち間違えた、入れ忘れた。ですがこれらは気をつけて減らす類のものではありません。件数が増えれば、どれだけ注意深い人でも必ず起こります。
ですから対処は単純です。手で入力する工程そのものを無くします。eBayの注文情報を読み込んで配送ラベルを作れるツールを使えば、発送した時点で追跡番号もキャリアも自動でeBayに戻ります。選び間違いも打ち間違いも入れ忘れも、起こりようがなくなります。
選択肢は配送ツールの選び方に整理してあります。eBay公式のCPaSSでも、外部の配送ツールでも構いません。共通しているのは、eBayの注文情報からラベルを作り、追跡番号を自動でeBayへ返すという一本の流れになっていることです。この流れに乗ってしまえば、追跡番号について考える時間はゼロになります。
導入の目安は「面倒だと感じたとき」です。月に数件のうちは手入力でもまわりますが、そこで手入力の癖をつけると、件数が増えたときに事故が起きます。早めに道具を替えておくほうが、後から直すより楽です。
ツールを使わずに手で入れる場合に見るところは、2つだけです。ひとつはキャリア名を、ラベルを作った業者の名前どおりに選ぶこと。もうひとつは番号を手打ちせずコピー&ペーストすることです。
入れた後は、翌日に追跡が動き出しているかを一度見れば足ります。間違えていたことに気づいたら、同じ画面から追跡番号を上書きして直せます。直したうえでバイヤーに一言添えておけば、それで済む話です。
発送してからやること:追跡・評価・入金
発送の翌日、追跡番号の状態を一度だけ確認します。見るのは「反映されているかどうか」だけで、どこまで進んだかは気にしなくて構いません。丸1日たっても何も表示されない場合は、番号かキャリア名を疑ってください。この段階なら直すのは簡単です。
それ以降、荷物が動いている間にやることはありません。日々の追跡確認は精神衛生上よくないので、私はやらないことをおすすめしています。手を動かす仕事は前半で終わっているので、そこから先は次の商品の出品に時間を使うほうが結果につながります。
荷物が届くと、バイヤーが評価(フィードバック)を残してくれることがあります。必ず付くものではありません。むしろ何も残さないバイヤーのほうが多いくらいで、これは普通のことです。
ただし今は、バイヤーが何も残さなくても評価が付く仕組みがあります。eBayが自動で、セラーにポジティブ評価を付けるというものです。条件は、配送予定日から7日たってもバイヤーが評価を残していないこと、追跡が期日どおりの配達を示していること、取引に問題の兆候が無いこと。付いた評価は「eBay Automated Feedback」という名前で表示されます。米国では2025年に全セラーへ展開されました。なお、その後60日以内にバイヤー本人が評価を残した場合は、自動の評価と置き換わります。
セラー側からもバイヤーに評価を返せます。ここで知っておきたいのが、セラーがバイヤーに付けられる評価はポジティブのみだということです。支払いが遅かった、無理な要求をされた、といった場合でもネガティブは付けられません。ですから評価を「けん制の道具」として使うことはできず、返す評価は基本的に「取引ありがとうございました」の意味しか持ちません。なお、この返す作業はSelling preferencesの「Automate feedback」で自動化できますから、手作業で毎回送る必要はありません。設定の手順や、購入直後のメッセージ・不在時の自動返信まで含めた自動化の整理はeBayの自動返信・自動フィードバック設定にまとめました。
もしネガティブ評価が付いてしまった場合の動き方は、ネガティブ評価がついた時の対応フローにまとめてあります。先に読んでおくと、いざその日が来たときに感情で動かずに済みます。
最後に、意外と誤解されているのが入金のタイミングです。売上金の動きは、荷物が届いたかどうかとは関係ありません。バイヤーの支払いが済んだ時点から、eBay側の処理が始まります。
流れとしては、支払いからおおむね2営業日前後で Seller Hub の Payments にある Available funds(出金可能残高)に反映され、そこから設定した周期で Payoneer のアカウントへ送金されます。さらにPayoneerから日本の銀行口座へ引き出す、という段階が続きます。それぞれの段階で1〜2営業日かかるので、「売れた日」と「口座に円で着金する日」は1週間前後ずれるのが普通です。
この時差を知らないと、仕入れの資金繰りで詰まります。特に始めたばかりの時期は、売上が入る前に次の仕入れをすることになるので、手元資金がどこまで持つかを先に把握しておくことが大事です。手数料を差し引いた後で実際にいくら残るのかは、eBay手数料の全体像と利益計算で計算のしかたを確認してください。
間に合わないとき、間違えたときのやり直し方
仕入れ先からの入荷が遅れた、体調を崩した。どうしてもハンドリングタイム内に発送できないことはあります。このとき最悪の対応は黙って遅れることです。バイヤーから見れば、期限が来ても何も動かない出品者になります。
やることは2つです。ひとつは、遅れる見込みが立った時点でバイヤーにメッセージを送ること。事情と、いつ発送できるかを伝えます。ほとんどの場合は待ってもらえますし、待てないと言われたらキャンセルに応じます。もうひとつは、同じ状況を繰り返さないようにハンドリングタイムそのものを長めに設定し直すことです。設定はBusiness Policiesから変更できます。
なお、セラー都合のキャンセルは取引欠陥率(基準0.5%以下)に計上されます。対応の型はキャンセル対応の3パターンにまとめてあります。
間違えて別の注文を発送済みにしてしまった、という場合は取り消せます。Paid and shipped(発送済み)の一覧から対象の注文を開き、発送済みの取り消しを選ぶと、注文は Awaiting shipment に戻ります。追跡番号だけを直したい場合は、取り消さずに追跡情報の編集から上書きすれば足ります。
ひとつ注意点があります。同じバイヤーが複数の商品を別々に支払った場合、それぞれが独立した注文として扱われます。1つの箱にまとめて送ったとしても、注文ごとに発送通知と追跡番号の登録が必要です。片方を忘れると、その注文だけが未発送のまま残り、遅延として記録されてしまいます。同梱で送るときは、注文の数を必ず数えてください。
配送予定日を過ぎても届かない、という連絡が来たら、まず追跡を確認します。動きが止まっている場所によって、対応が変わります。
- まだ日本国内:発送業者に照会をかける。バイヤーには状況を共有し、待ってもらえるか確認する
- 相手国の税関で止まっている:珍しくない。通関で数日〜数週間かかることがある旨を説明し、追跡のリンクを送る
- 相手国内で配達中のまま止まっている:バイヤーに、現地の配送業者へ問い合わせてもらう。近所の受取局に留め置かれていることが多い
- 「配達済み」と出ているのに届いていないと言われた:追跡の記録を示しつつ、周辺や同居人・管理人への確認を依頼する。追跡があることが、ここでの拠り所になる
Thank you for letting me know. I checked the tracking and your parcel is currently held at customs in your country. This sometimes takes a little longer than the estimated date. Here is the tracking link so you can follow it: [URL]. If there is no movement in the next few days, please let me know and I will contact the carrier.
(ご連絡ありがとうございます。追跡を確認したところ、お荷物は現在そちらの国の税関にあります。配送予定日より少し時間がかかることがあります。追跡リンクはこちらです:[URL]。数日たっても動きが無いようでしたらお知らせください。配送業者へ照会いたします。)
話がまとまらず、バイヤーが未着や不良のケースを開いた場合は、そこから先は別の手続きになります。返品の型はリターンリクエスト対応の型に、支払いに関する異議申し立てはPayment Disputeの対応にまとめてあります。高額商品では署名を受け取り条件にしておくと、この局面での立場がはっきりします(高額商品の署名オプション)。
「売れた後」は、慣れれば15分の流れ作業
ここまで読むと項目が多く感じられるかもしれませんが、実際に毎回考えることはほとんどありません。梱包資材の置き場所、使う業者、郵便局へ行く時間帯、番号を入れるタイミング。この4つを最初に決めてしまえば、あとは同じ手順を繰り返すだけになります。1件あたり15分、慣れれば10分を切ります。
逆に、決めていないと毎回考えることになります。今日はどの業者にしようか、この箱でいいだろうか、番号は後で入れようか。その小さな迷いが積み重なると、売れることそのものが億劫になっていきます。「売れた後」を流れ作業にできるかどうかは、続けられるかどうかに直結します。
- Seller Hub の Orders → Awaiting shipment を開き、商品・住所・期限の3つを確認する
- お礼のメッセージを2行で送る(テンプレをコピーするだけ)
- ハンドリングタイム内に梱包し、インボイスに製造国と金額を正しく書いて発送する
- 追跡番号は手で打たない。eBayの注文からラベルを作れる配送ツールを使い、自動で戻す形にしておく
- 翌日、追跡が動き出したかだけ見る。動いていれば、あとは待つ
- 評価は待っていれば積み上がる(条件を満たせばeBayが自動で付ける)。入金は支払いから数営業日ずれることを頭に入れておく