先に結論:eBaymagとは何をしてくれるツールか
ebay.comに出品しているだけでは、イギリスやドイツなど米国以外のeBayサイトの検索結果には、基本的に出てきません。eBay公式ヘルプによれば、米国の出品を海外サイトの検索結果にも表示させる「International site visibility」という仕組みはあるものの、対応しているのは米国・イギリス・カナダの3サイトだけで、ドイツやフランスなどには公式に対応する仕組み自体がありません(詳しくは次の章で一次情報を示します)。eBaymagは、この「そもそも検索に出てこない」問題を、米国以外の国のサイトに実際の出品を自動で作ることで解決する、eBay公式の無料ツールです。出品そのものはいつもどおりebay.com向けに1回行うだけで、翻訳と価格の換算はeBaymagが自動で行います。以前、米国の関税制度が変わったときの記事で、売り先を分散する方法の一つとして名前だけ挙げていたのが、このツールです。この記事では、eBay公式サイトの案内をもとに、何ができて、どこに注意すればいいかを整理します。
① そもそも、なぜ複数サイトに出す必要があるのか
- ebay.comの出品は、米国・イギリス・カナダ以外の国のサイト(ドイツ・フランス等)の検索結果には、公式には出てこない仕組みになっている。米・英・加でさえ、表示は自動ではなく任意の追加設定が必要
② eBaymagでできること
- いつもどおりebay.comに出品するだけで、米国以外の最大7か国のeBayサイトに自動翻訳・自動換算つきで展開できる
③ 費用
- ツールの利用も出品も無料だが、これは「出品するところまで」の話。売れたときの手数料は国ごとにかかり、通貨を換算する手数料も別途発生する
④ 導入前に必ず確認すること
- 出品リミット(一定期間に出せる商品数と金額の上限)は国ごとに増えるのではなく、米国分の枠を各国で共有して消費する
ebay.comだけでは検索に出てこない理由
ebay.comは米国向けのサイトですが、海外のバイヤーもアクセスできるため、「ebay.comに出品しておけば、イギリス人やドイツ人も勝手に見つけてくれるはず」と思われがちです。ですが、eBay公式ヘルプ(Selling internationallyページ)には、次のように説明されています。
"International site visibility is an optional upgrade that ensures your eBay.com listings are visible in top-level search results on other eBay sites. Currently, international site visibility is only supported by the United States, United Kingdom, and Canada sites."
(訳:International site visibilityは、ebay.comの出品を他のeBayサイトの検索結果の上位にも表示させるための、任意で追加するアップグレード機能です。現時点でこの機能に対応しているのは、米国・イギリス・カナダのサイトのみです。)
つまり、ドイツ(ebay.de)やフランス(ebay.fr)などのサイトには、ebay.comの出品を検索結果に出すための公式な仕組み自体が用意されていません。例外はカナダ(ebay.ca)で、配送設定で「カナダ・北米・世界中への発送」を選んでいれば、追加の手続きなしで自動的にebay.caの検索結果に表示されると案内されています。米国・イギリス・カナダでさえ、このInternational site visibilityは自動ではなく、出品のたびに追加で選ぶ任意の機能です。
ここで誤解しやすいのが、「ebay.comで買っているイギリス人やドイツ人は、ebay.co.uk・ebay.de用の会員とは別に、ebay.com専用のアカウントを持っている」という考え方です。実際には、eBayのアカウントはサイトをまたいで1つに共通しています。eBayコミュニティのフォーラムでも、ebay.comの登録情報のままebay.de・ebay.co.uk・ebay.caにログインできたという利用者の報告が複数あります。つまり、ebay.comで買い物をしている非米国のバイヤーも、口座(アカウント)自体は同じものです。
違うのは、日々の検索をどのサイトから始める習慣になっているか、という入り口の部分です。多くの非米国バイヤーは、言語・通貨が自国向けに表示される自国サイト(ebay.de・ebay.co.uk等)を検索の起点として日常的に使っており、ebay.comの出品はそこには自動で出てきません。ebay.comでも買い物ができる同じアカウントの人が、その回の検索ではたまたまebay.comの結果を見ていなかった、というだけの話です。
eBay公式のセラー向け国際販売ガイド(Cross-Border Trade Handbook。eBayイギリスが公開)には、海外サイト向けに出品を最適化することの効果として、次の2点が挙げられています。
- 検索順位:「Improve visibility for your listings so they rank as well in search results on international sites as they do on local sites」(海外サイトの検索結果でも、現地の出品と同じように上位に出るよう、見え方を改善する)と説明されています。裏を返せば、最適化していない出品は、現地の出品ほど上位に出にくいということです
- 言語:「Appeal to more buyers with item descriptions displayed in the local language」(商品説明を現地の言語で表示することで、より多くのバイヤーに響く)とも案内されています。前述のInternational site visibilityで表示される場合も、商品説明は英語のまま、現地の言語には翻訳されません
eBayの海外展開に関する公式ページ(export.ebay.com)でも、複数サイトへの出品のメリットとして「Gain greater in-market visibility on each site you list(出品したサイトごとに、その市場内での露出を高められる)」「Include your inventory in local selling campaigns(現地限定のセールキャンペーンの対象に商品を含められる)」を挙げ、次のように説明しています。「A buyer from Germany might be searching on ebay.de for the items you sell. If your listings aren't visible, they may miss out.」(ドイツのバイヤーは、あなたが売っている商品をebay.deで探しているかもしれない。そこで見つけられなければ、そのバイヤーを逃してしまう)。
eBaymagは、これらの「①ebay.comだけでは検索結果に出てこない」「②出ても検索順位で不利になりやすい」「③出ても翻訳・現地通貨表示がされない」という3つの壁を、米国以外のサイトに翻訳・現地通貨換算つきの出品を自動で作ることで、まとめて解消するツールです。
eBaymagとは:eBay公式・無料の多国展開ツール
eBay公式サイト(ebay.co.jp/ebaymag)によると、eBaymagはeBay Inc.(日本での窓口はイーベイ・ジャパン)が提供する公式ツールで、「1つのプラットフォームで出品、注文管理を最適化」できると案内されています。主な機能は、①出品内容の自動翻訳、②現地通貨への自動換算、③在庫情報の自動同期、④既存出品の一括インポート・一括出品、の4つです。既存アカウントを持っている人は「Sign in via eBay」からeBayのログイン情報でそのまま使い始められます。
出品できる国と、翻訳・通貨換算の仕組み
eBaymag公式FAQによると、対応しているのは米国(ebay.com)を含めて8つのeBayサイトです。米国以外では、イギリス(ebay.co.uk)・ドイツ(ebay.de)・フランス(ebay.fr)・イタリア(ebay.it)・スペイン(ebay.es)・オーストラリア(ebay.com.au)・カナダ(ebay.ca)の7サイトに展開できます。どの国に出すかは商品ごとに選べるので、必ず全部の国に出さないといけないわけではありません。
フランス向けにはEPR(拡大生産者責任。廃棄物の回収・リサイクル費用を生産者側が負担する仕組み)、ドイツ向けにはLUCID番号(包装材のリサイクル登録番号)の登録、EU向け全体にはGPSR(一般製品安全規則。EUで販売する製品の安全表示に関する規則)にあわせた表示のテンプレート設定が必要になる場面があります。対象になるかどうかは商品のカテゴリーや状況によって変わるため、出品前にeBaymagの案内画面とeBay公式ヘルプで、自分の商品が対象かどうかを確認してください。
使い方:登録から出品開始までの流れ
eBaymag公式FAQによると、大まかな流れは次のとおりです。①eBaymagのサイトで「Sign in via eBay」から、いつも使っているeBayアカウントでログインする(新規の場合はアカウントを作り利用規約に同意する)。②すでにある出品をインポートするか、新しく出す商品を選ぶ。③展開したい国を選ぶ(国ごとにON/OFFできる)。④翻訳・換算・在庫の同期が自動で行われ、各国のサイトに出品が反映される。反映までの目安は約1日で、初めて使うときはさらに時間がかかることがあると案内されています。
eBay公式サイトには、この②(商品を選ぶ)③(国を選ぶ)の実際の操作画面が掲載されています。ログイン後に開く「アイテム」画面には、商品の一覧と、それぞれの国旗アイコンが並んでいます。国旗の列の上にあるトグルスイッチが国ごとのON/OFFで、行ごとの緑の丸は「その国への反映が済んでいる」、時計マークは「反映待ち」を表しています。展開したい商品にチェックを入れて選ぶと、下の画面のとおりです。
商品を選んだら、画面下に出てくる「◯アイテムに変更を適用する。」というボタンを押します。これで、チェックを入れた商品について、選んだ国への反映が進みます。
- Best Offer(値下げ交渉)を設定する場合は、「販売価格 > 自動承認額 > 自動却下額」の順を守る必要がある。この順番がずれていると、eBaymag公式FAQによれば同期が失敗する
- eBaymag経由の出品はInventory API(在庫を外部システムと自動でつなぐeBayの仕組み)の対象外。eBaymag以外の出品ツールと併用している場合、在庫数がリアルタイムでは連携されないため、複数の販路で同時に売れて在庫が足りなくなる「二重受注」が起こり得る
- 支払いが済んでいない注文は在庫の連携対象にならない。同じ商品が複数の国でまだ「未払い」のまま残っていると、その間に他の国でも売れてしまうことがある
- 注文をキャンセルしたときにRelist(出品し直し)を選ぶかどうかは、必ず「No」を選ぶ。「Yes」を選ぶと、その出品はeBaymagの管理対象から外れてしまうと案内されている
出品リミットと費用の注意点
eBayには、一定期間に出せる商品の数と合計金額の上限があります。これを出品リミットと呼びます(詳しくはリミットアップの記事で扱っています)。eBaymagを使うとき、このリミットの扱いを勘違いしやすいポイントがあります。
eBaymag公式サイトによると、ツールの利用料は無料です。出品にかかる手数料(Insertion fee)も、日本セラー限定のプロモーションとして無期限で無料になっています。ここまでが「無料」の範囲です。商品が売れたあとにかかる費用は、この無料とは別に発生します。「無料ツール」という言葉だけを見て、売れたあとの費用まで無料だと思い込まないよう、実際に何がいくらかかるのかを次で整理します。
eBaymag公式FAQと、eBay公式ヘルプ(Selling fees)を確認すると、eBaymag経由で他国サイトに出した商品が売れたときにかかる費用は、次の2種類に分かれます。
- ① 各国サイトの成約手数料(Final value fee):出品先の国のeBayサイトごとに、独自の手数料ポリシーが定められています。料率はカテゴリーやセラーのアカウント種別によって変わるため、正確な数字は展開する国のeBay公式ヘルプ(各国サイトの手数料ページ)で確認してください
- ② eBayの通貨換算手数料(Seller currency conversion charge):他国サイトに出品・販売すると、eBayは出品手数料の支払いと売れたときの入金の両方で、米ドルと現地通貨(ユーロ・ポンドなど)を換算します。eBaymag公式FAQ(日本のセラー向け)には「eBay他国サイトでの売上金が米ドルに換金される際に3%の手数料が発生します」と明記されています。eBay公式ヘルプ(Selling fees)にも、他国サイトで出品・販売する際の通貨換算には、eBayが上乗せする手数料(seller currency conversion charge)がかかる仕組みである旨が記載されており、あわせて確認できました
さらに、eBayから米ドルで受け取った売上金をPayoneerで日本円に出金する際にも、別途為替手数料(最大2%程度)がかかります。つまり他国サイトでの売上は、「①現地の成約手数料」「②eBayの通貨換算手数料」「③Payoneer出金時の為替手数料」と、段階を経るごとにコストが積み重なっていく構造になっています。
導入前に確認すべきこと
出品する国が増えると、その分だけ商品を見る人の母数も増えます。それ自体は良いことですが、VeRO(知的財産の侵害を理由にeBayが出品を削除する仕組み)のような、権利者からの申し立てに触れる商品も、それだけ多くの国の店頭に並ぶことになります。ブランド名やキャラクターが関わる商品を複数国に展開する前に、あらためて出品内容を見直しておくと安心です。
そのほか、eBaymag公式FAQでは、在庫切れの商品を「Out of stock」に設定しているかどうかの確認、アカウントを削除する場合は完了までに複数の手続きと2〜3日程度かかること、不明点はeBaymagの画面右下にある「Feedback」ボタンから問い合わせられることが案内されています。
導入前のチェックリスト
- ebay.comに出しているだけでは、ドイツ・フランスなど米国以外のサイトの検索結果には基本的に出てこないことを理解しているか
- Seller Hub Overviewで、自分の現在の出品リミット(数と金額の上限)を確認したか
- 展開したい国の数に対して、リミットに余裕があるか(4か国なら5倍が目安という公式の例を参考にする)
- Best Offerを設定している商品は「販売価格 > 自動承認額 > 自動却下額」の順になっているか
- eBaymag以外の出品ツール・販路と併用している場合、在庫が二重に売れる可能性を理解しているか
- フランス・ドイツ・EU向けの登録(EPR・LUCID・GPSR)が、自分の商品に必要かどうかを確認したか
- ブランド名やキャラクターが関わる商品は、複数国への展開前にあらためて見直したか
- 価格は出品時点の為替レートで固定されること、その後の相場変動は自動で反映されないことを理解しているか
- 成約手数料に加えて、eBayの通貨換算手数料・Payoneer出金時の為替手数料もかかることを踏まえ、価格に多少の余裕を持たせるかどうかを検討したか