「売っていいか」を決めるルールは3か所にある
この話題は「eBayの出品禁止商品リスト」として語られることがほとんどです。しかし実務で日本のセラーが止められる場所は、そこだけではありません。eBayの審査は通ったのに、日本の税関で荷物が止まることがありますし、日本からは問題なく出せたのに、相手の国の税関で廃棄されることもあります。
それぞれ管轄が違うので、引っかかったときに起きることも違います。eBayで引っかかれば出品が消えてアカウントに傷がつき、日本で引っかかれば荷物が返送か放棄になり、相手国で引っかかれば商品も送料も失ったうえにバイヤーとのトラブルになります。まずこの地図を持っておいてください。
- ① eBayの出品ポリシー:出品が削除される。繰り返すと出品制限、最終的にアカウント停止
- ② 日本の輸出規制:荷物が税関で止まる。返送か任意放棄(所有権の放棄)になる
- ③ 相手国の輸入規制:現地で返送か廃棄。商品も送料も戻らず、未着のケースにもなる
- この3か所はそれぞれ独立している。ひとつ確認したから他も大丈夫、ということはない
ルール①:eBayが禁止・制限している商品
eBayのポリシーは二階建てになっています。ひとつは禁止(Prohibited)で、こちらは条件を問わず出品できません。もうひとつが制限(Restricted)で、条件を満たせば出品できるという意味です。ゼロか1かではない、というのがここでの大事なところです。
カテゴリの数は70前後あり、成人向け商品からエアソフトガン、動物製品、美術品、化粧品、クーポン、イベントチケット、食品、政府発行品、危険物、人体の一部、医療機器、生きた動物、宝くじ、植物と種子、処方薬、不動産、レプリカ、株式・有価証券、盗難品、たばこ、使用済み衣類、乗り物、仮想通貨、武器まで、かなり細かく分かれています。
ただ、この一覧を全部覚える必要はありません。自分が扱うジャンルの周辺だけ見ればいいからです。カメラを扱う人が人体の一部のポリシーを読む必要はありませんし、フィギュアを扱う人が不動産のポリシーを読む必要もありません。
- アダルト(成人向け)に当たるもの。日本では一般の店に普通に並んでいる同人誌・写真集・雑誌・グッズでも、eBayの成人向けポリシーの側から見ると扱いが違う。「国内で売られているのだから大丈夫」は通じない
- たばこ・電子タバコ関連。本体だけでなく、リキッド・カートリッジ・関連の器具まで含めて扱いが厳しい
- 大量虐殺や殺人を想起させるもの。ナチス関連品、戦地から持ち帰られた記念品、事件や犯罪者にまつわる品。ミリタリー雑貨や古い勲章・軍装品を扱う人は、意図せずここに触れることがある
- 差別を想起させるもの。人種・民族・宗教を侮蔑する図柄や文言が入ったもの。古い玩具、看板、広告物、紙もの、キャラクターグッズに紛れていることがある
- 動物や植物からできたもの。象牙・べっ甲・毛皮・革・珊瑚・種子。ここはルール②にも重なる
- 武器に見えるもの。モデルガン、エアソフトガン、刃物。日本国内では合法でも扱いが違う
最初の4つは、いずれも「日本の感覚では商品として成立しているのに、eBayでは別の基準が当たる」ものです。偽物やコピー品のように、はじめから後ろめたさがあるわけではありません。だからこそ、悪気なく出品してしまいます。
特に注意したいのは古いもの・戦争にまつわるもの・昔の紙ものです。当時は当たり前だった図柄や表現が、今の基準では差別的とみなされることがあります。骨董品や紙ものを仕入れる人は、商品の状態だけでなく描かれているものと書かれている文言まで見てください。
ここで誤解しやすいのが、eBayのシステムは出品の時点で全部を止めてくれるわけではないということです。分かりやすいキーワードは弾かれますが、写真や説明文の中身まで自動で判定しているわけではありません。
つまり、出品ボタンが通ったことは「問題がない」の証明にはならないのです。数日後、あるいは数か月後に削除されることもあります。判断の責任は最後まで出品した側にある、という前提で考えてください。
VeRO:本物を売っていても出品が消える仕組み
禁止商品と並んで、初心者がいちばん驚くのがVeRO(Verified Rights Owner Program)です。日本語では知的財産保護プログラムと呼ばれます。
仕組みは単純です。ブランドや著作物の権利を持っている会社が、自分の権利を侵害している出品を見つけたらeBayに申し立てる(Notice of Claimed Infringement/NOCI)。eBayは申立ての内容が揃っているかを確認したうえで、該当する出品を削除し、セラーに理由を添えた通知を送る。これがVeROの流れです。
ここで押さえておきたいのは、侵害かどうかを最初に判断しているのはeBayではなく権利者側だということです。だから「本物を売っているのに」という反論は、eBayに向けても話が進みません。相手はあくまで権利者になります。
ひとつめは商品そのものが侵害品である場合。偽ブランド品、レプリカ、海賊版のソフトやディスクなどです。これは弁解の余地がありません。
ふたつめが、日本のセラーがいちばん踏みやすい出品の中身が侵害している場合です。商品は正真正銘の本物でも、メーカーの公式サイトから持ってきた写真を使っている、メーカーの商品説明をそのまま訳して貼っている、ロゴ画像をタイトル画像に使っている。写真と文章には撮った人・書いた人の著作権があるので、これらは立派な侵害になります。
三つめが正規の販売網の外で売られていることを権利者が問題にする場合です。いわゆる並行輸入品にあたるもので、本物であっても、権利者が国ごとの販売代理店と契約している場合には申立ての対象になることがあります。
削除の通知が来た日にやること
知的財産の侵害で出品が削除されると、eBayから理由を添えた通知が届きます。ここで多くの人が「どう直せば出し直せるか」を考え始めます。その方向で動かないでください。
eBayの案内には、出品自体が侵害している場合(許可なく著作物の画像を使っているなど)は、その部分を取り除けば再出品できる可能性がある、と書かれています。しかし実務でこれが通ることは、まずありません。申し立てているのは権利者であり、出し直すということは、その権利者に対して「自分の扱っている品は侵害品ではない」と証明しなければならないということです。個人のセラーがそれを認めさせられたという話を、私は聞いたことがありません。
それでも写真や説明文を変えて強引に出し直すと、どうなるか。また削除され、警告が積み上がり、出品制限やアカウント停止に近づきます。1件の商品を守ろうとして、アカウントごと失う動き方です。削除されたら、その出品は諦める。これが唯一の現実的な結論です。
ひとつめは通知を保存することです。権利者の名前と削除の理由を控えておきます。この2つが、次に何をやめるべきかを決める材料になります。
ふたつめは同じ理由に当てはまる出品を、自分から全部下げることです。同じブランド、同じ仕入れ先、同じ写真の使い方。指摘されてから消すのと、自分で消すのとでは、記録の積み上がり方が違います。1件で止められるかどうかは、ここで決まります。
三つめは入口を変えることです。商品そのものが侵害品だった場合は、仕入れ先を見直します。「安く手に入る本物」に見えたものが実はそうでなかった、というのはよくある話です。出品の作り方が原因だった場合は、写真と説明文を自分で用意する習慣に切り替えます。eBayサスペンドの原因と対策でも触れていますが、入口を変えないかぎり、同じことが必ずもう一度起きます。
あわせて考えておきたいのが、その権利者の商品を今後も扱うかどうかです。VeROに参加して積極的に申立てをしている権利者の商品は、正規品を扱っていても繰り返し削除される可能性があります。
1件あたりの利益と、削除のたびに積み上がる記録を天秤にかけて、そのブランドから撤退するという判断も普通にあり得ます。扱える商品は他にいくらでもあります。ここで意地を張る理由はありません。
- eBayは、知的財産の侵害を繰り返したセラーには、警告・出品の制限・アカウント停止を含む措置を取ると明記している
- 「直して出し直す」は、その繰り返しを自分から作る動きになる。1件を守ろうとしてアカウントを失うのは、いちばん割に合わない
- 1件目で終わらせられるかどうかが分かれ目。1件削除されたら、その日のうちに同じ理由の出品を全部探して下げる
- アカウントが止まると、出品も売上金の引き出しも止まる。積み上げた評価も一緒に失う
- 「1品の利益」と「アカウント」は釣り合わない。迷ったら出さない、が唯一の正解になる
正規品しか扱っていないのに申立てを受けた、という場合に残された道は、出し直すことではなく、権利者に申立ての撤回をお願いすることです。撤回できるのは申し立てた本人だけだからです。ただし返事が来ない、あるいは断られるのが普通だと思っておいてください。期待して待つ時間があれば、次の商品を出すほうが確実に前に進みます。
送るなら、ケンカ腰にならず、事実だけを短く書きます。そして返事が来るまでは絶対に出し直さない。ここだけは守ってください。
Dear Sir or Madam,
My eBay listing (item number: XXXXXXXX) was removed following your report. I sell only genuine items that I purchased in Japan, and I have no intention of infringing your rights. I have not relisted the item and I will not do so unless you allow it. If there is any information I can provide about the item or where I obtained it, please let me know. If you find the report was made in error, I would be grateful if you could consider withdrawing it. Thank you for your time.
(拝啓 御社からのご報告により、私のeBay出品(アイテム番号:XXXXXXXX)が削除されました。私は日本国内で仕入れた正規品のみを販売しており、権利を侵害する意図はございません。当該商品は再出品しておらず、御社のご了解が無いかぎり再出品するつもりもありません。商品や仕入れ先についてお示しできる情報がありましたらお知らせください。もし行き違いによるご報告でしたら、取り下げをご検討いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。)
ルール②:日本から送り出せるか
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。eBayのポリシーを全部読んでも、日本の法律のことは書かれていません。そして日本のセラーが実際に足を取られるのは、しばしばこちら側です。
代表格がワシントン条約(CITES)です。絶滅のおそれのある野生動植物を守るための国際条約で、対象の品物を海外へ送るには、事前に経済産業大臣から「輸出承認証」と「CITES輸出許可書」の発給を受けなければなりません。
「うちにあるのは絶滅危惧種じゃない」と思われるかもしれませんが、対象は思っているよりずっと身近にあります。
ワシントン条約では、対象の動植物が附属書I・II・IIIに分けられています。附属書Iに載っているものは商業目的の国際取引が原則として禁止です。つまり、売るために送ることはできません。附属書IIは取引そのものは認められますが、輸出承認が必要です。附属書IIIは、掲載国が原産のものであれば承認が、そうでなければ原産地証明書が必要になります。
象牙については特に厳しく、条約が適用された後に取得したものは輸出入が原則として禁止されています。「昔から家にあったもの」という説明が、そのまま通るわけではありません。
- 20万円以下の郵便物でも、許可書の提示は必要。輸出申告が要らない金額だからといって、CITESの手続きまで免除されるわけではない
- 中古品・アンティークでも対象になる。古さは免罪符ではなく、むしろ古いものほど規制対象の素材が使われている
- 書類に不備があると、輸出国への返送か「任意放棄」(所有権の放棄)になる。商品は戻らず、送料も戻らない
- 郵便局の窓口に出す前に、税関の事前検査を受けておくのが安全とされている
ルール③:相手の国が受け取れるか
3つめは、送り先の国の輸入規制です。eBayも国際取引のポリシーの中で、出品したものが自分の地域の法律に適合しているかを確認する責任はセラーにあるとしています。そして、その「地域」には相手の国も含まれます。
差が出やすいのは、食品、化粧品、医薬品やサプリメント、種子や植物、リチウム電池を内蔵した機器、そして電波を出す機器です。無線を使う商品は国ごとに技術基準と認証が違うので、日本国内では普通に売られているものでも、そのまま持ち込めない国があります。
各国の法律を直接調べるのは現実的ではありません。実務的な近道は、使っている発送業者が公開している禁制品・条件付き受託品のリストを見ることです。日本郵便もFedExもDHLも、国別の制限を案内しています。業者が受け付けないものは、そもそも送れません。
そのうえで、特定の国で問題が起きやすいと分かっているなら、eBay側で発送除外国を設定しておくのが確実です。設定の場所はBusiness Policiesにまとめてありますが、除外する国の決め方・ハンドリングタイムとの組み合わせ方はeBayハンドリングタイムと発送除外国【守りの設定まとめ】で詳しく解説しています。売り先を絞ることは後ろ向きな判断に見えますが、返送されて往復の送料を失うより、はるかに安く済みます。
なお、相手国で止まった荷物は返送されるか、現地で廃棄されます。バイヤーから見れば「買ったのに届かない」状態なので、未着として扱われることになります。その場面での対応はeBayで売れた後の流れとリターンリクエスト対応の型を先に読んでおいてください。
出品前の3分でできる確認
ここまでの内容を丸ごと記憶しておく必要はありません。出品作業の中に確認の手順を組み込んでしまえば、あとは自動的に守られます。1商品につき3分もかかりません。
- ブランド名で調べる。そのメーカーがVeROに参加して権利者としての方針を公開していないか確認する。参加していれば、何を禁じているかも書かれている
- 写真は自分で撮る。仕入れ先の通販サイトからも、メーカー公式からも持ってこない。これだけで削除理由のかなりの部分が消える
- 説明文は自分の言葉で書く。メーカーの商品説明を翻訳して貼らない。実物を見て、状態を自分で書く
- タイトルのブランド名の使い方に注意する。互換品や社外品を売るときは、正規品と誤解されない書き方にする(英語タイトルの作り方)
- 素材を見る。革・べっ甲・象牙・珊瑚・毛皮・羽根が使われていないか。古いものほど確認する
- 迷ったら出さない。判断に5分以上かかる商品は、その5分を別の商品の出品に使うほうが儲かる
攻める前に、守りを先に固める
出品禁止商品もVeROも、内容そのものは難しくありません。難しいのは「自分がそれに当たっていることに気づけない」ことです。偽物を承知で売る人はごく一部で、実際に削除されている出品の多くは、悪気なく踏んでいます。
だからこそ、覚えるべきは個別の決まりごとではなく「見るところは3か所ある」という枠組みのほうです。この枠組みさえ持っていれば、初めて扱うジャンルでも、自分で調べる先が分かります。eBayのポリシーを見る、日本の輸出規制を見る、相手国と発送業者を見る。順番はいつも同じです。
- 「売っていいか」を決めるルールは3か所にある。eBayの出品ポリシー/日本の輸出規制/相手国の輸入規制
- eBayのポリシーは禁止と制限の二階建て。制限は条件を満たせば出せる。自分のジャンル周辺だけ読めばいい
- 出品ボタンが通ったことは、問題がない証明にはならない。後から削除されることがある
- VeROは権利者が申し立て、eBayが削除する仕組み。本物でも、写真や説明文の流用で消える
- 削除通知が来たらその出品は諦める。直して出し直そうとしない。代わりに、権利者名と理由を控え、同じ理由の出品を自分から下げ、入口を変える
- 繰り返しは警告・出品制限・アカウント停止につながる。1件目でその日のうちに全部片づける
- 象牙・べっ甲・ワニ革などは輸出承認証とCITES輸出許可書が必要。20万円以下の郵便物でも許可書は要る
- 相手国の規制は発送業者の禁制品リストで当たりをつけ、危ない国は発送除外に設定する