先に結論:外へ誘う詐欺には乗らない、中の詐欺は手続きで守る
結論から書きます。eBay輸出で遭う詐欺と悪質行為は、「eBayの外へ誘い出す型」と「eBayの中で起きる型」の2つに分かれます。そして対策も、この2つで全く違います。
外へ誘い出す型は、外部での直接決済の誘い、eBayを名乗るニセのメール(フィッシング)、メールで届く「支払ったから早く送って」というニセの支払い通知など。eBayの外で起きたことはeBayの保護が届かないので、対策はただ1つ、取引をeBayの外へ出さないことです。
中で起きる型は、届いているのに「届かない」と言われる、返品で別の品物が返ってくる、使ってから返品される、といったもの。こちらは期限内の手続きと証拠、そして通報(Report a buyer)で対処でき、条件を満たせばeBayがセラーを守る仕組み(評価の削除・返金責任の免除など)も働きます。
さらにその手前に、出品初日にできる事前設定があります。ブロックリストとBuyer requirements(バイヤーの条件設定)です。お店を開ける前に鍵と防犯カメラを付けておくのと同じ位置づけで、この記事の後半で手順を説明します。
- 手口は「eBayの外へ誘い出す型」と「eBayの中で起きる型」の2つに分かれる
- 外へ誘う型(外部決済・フィッシング・ニセ支払い通知)はeBayの保護の外。対策は「誘いに乗らない」の一択
- 中で起きる型(未着・すり替え・返品悪用)は期限内の手続き+証拠+通報で対処する。感情で止まって期限を逃すのがいちばん危ない
- 事前設定はBuyer requirements(3つの条件で自動ブロック)とブロックリスト(最大5,000人)。出品初日に済ませられる
- 悪質バイヤーを通報して認められれば、ネガティブ評価の削除・セラーレベルへのカウント除外・返金責任の免除などの保護が働く
- 評価0のバイヤーは詐欺師ではない。誰もが評価0から始まる。見るのは評価ではなく行動のサイン
詐欺の入口は2つある:eBayの外へ誘う型と、中で起きる型
詐欺の手口は「未着詐欺」「すり替え詐欺」「フィッシング」と名前で数えるといくらでも増えて、全部を覚えるのは無理に思えます。でも、入口で分けると2つしかありません。
1つめは、取引をeBayの外へ連れ出そうとする型。「手数料がもったいないから直接取引しよう」「このアドレスに連絡して」という誘いは、すべてここです。eBayのバイヤー保護もセラー保護も、eBayの中で完結した取引にしか働きません。外で起きたトラブルは、eBayから見れば存在しない取引です。だから連れ出そうとする。誘いに乗らなければ、この型の詐欺は原理的に成立しません。
2つめは、eBayの中の正規の手続きを悪用する型。未着の申し立て、返品、支払いの取り消しといった、本来はバイヤーを守るための仕組みを、ウソの理由で使う手口です。こちらは仕組みの中で起きるので、仕組みの中の対抗手段——証拠、期限内の対応、通報、セラー保護——で受け止めます。
この2分類を頭に入れると、怪しい場面に出会ったときの判断が速くなります。「これは外へ誘っているのか、中の手続きなのか」。外なら関わらない。中なら手続きで動く。迷いの大部分はこれで消えます。
eBayの外へ誘う詐欺:外部決済・フィッシング・ニセの支払い通知
いちばん多い誘い文句は「eBayの手数料分、安くしてあげる(安くして)から直接取引しよう」です。銀行振込、ギフトカード、外部の送金アプリ。形は何であれ、eBayのチェックアウトを通らない支払いの提案は、すべて断ります。外での取引はeBayの保護の外である上に、そもそもeBayの外への取引の持ち掛け自体が、eBayに通報できる行為として扱われています。持ち掛けられた時点で、相手はルールを外れています。
断り方は、丁寧に、短く、一度だけです。
Thank you for your message. I'm sorry, but I can only accept payment through eBay's checkout. This protects both the buyer and the seller. If you would like this item, please purchase it through the listing page. Thank you for your understanding.
(メッセージをありがとうございます。申し訳ありませんが、お支払いはeBayのチェックアウトを通してのみお受けしています。これはバイヤーとセラーの双方を守るためのものです。この商品をご希望でしたら、出品ページからご購入ください。ご理解に感謝します。)
「アカウントに問題があります。24時間以内にこちらから確認してください」。eBayやPayoneerを名乗るメールでリンクを踏ませ、ログイン情報を盗む手口です。狙われているのは商品ではなくあなたのアカウントそのもので、乗っ取られると出品や資金が危険にさらされます。
見分け方の基本はeBay公式も案内しています。eBayからの本物の連絡は、サイトにログインしたときのメッセージ(My eBayのメッセージ欄)にも必ず届きます。メールのリンクは踏まず、ブックマークから自分でeBayを開いて、同じ連絡が来ているかを確かめる。この一手間だけで、フィッシングはほぼ無力化できます。あわせて、パスワードの使い回しをやめることと、推測されにくいパスワードにしておくことも公式が勧めている基本です。
「PayPalから」「eBayから」を装って、「支払いが完了しました。発送してください」というメールだけが届く手口もあります。実際には支払われていません。メールを信じて発送したら、商品だけが消えます。
守り方は仕組みで覚えます。入金の確認は、メールではなく、eBayにログインして注文画面(Seller HubのOrders)で行う。売れた後の流れの記事で書いたとおり、本当に売れた注文は必ずOrdersのAwaiting shipmentに現れます。ここに無い注文は、存在しない注文です。メールは通知にすぎず、発送の根拠にはしない。この習慣が身についていれば、この手口も成立しません。
eBayの中で起きる詐欺:未着・すり替え・返品の悪用
ここからはeBayの中で起きる型です。まず、商品は届いているのに「届かない(Item not received)」と申し立てる手口。これへの備えは、売れた後の流れの記事で書いた日常の作業そのものです。eBayと連携した配送方法で送り、追跡番号を配達予定日より前にアップロードしておく。配達完了の記録が残っていれば、eBayのポリシー上も「配達の証拠があるのに未着を主張する」行為は禁止されていて、セラーは返金責任から守られます。
高額商品にはもう一段の備えがあります。米国宛て$750以上の取引では、配達時の署名確認が保護の条件になります。詳しくは署名確認の記事に書きましたが、「高く売れたときほど、署名を付けて送る」とだけ覚えておいてください。
次に、返品の悪用です。返品を受けたら箱の中身が別の品物だった(すり替え)、明らかに使い込まれた状態で返ってきた、正確に説明した商品なのに「説明と違う」という理由で返品された——。どれもeBayのポリシーが明確に禁止しているバイヤーの行為です。
備えは発送前の記録です。シリアル番号のある商品は番号を控えて写真に残す。梱包前に、商品の状態が分かる写真を撮っておく。数十秒の手間ですが、「私が送ったのはこれです」と示せる材料の有無が、後の交渉と通報の説得力を決めます。
実際に返品リクエストが来たときの受け方そのものは、返品対応の記事で書いた3営業日の型のとおりです。詐欺かもしれない、と感じても、まずは通常の手続きとして期限内に受けます。憤りで放置して期限を逃すと、内容の正しさと関係なく不利になる——これがこの型のいちばんの落とし穴です。
取引が終わった後で、バイヤーがクレジットカード会社に支払いの取り消しを申し立てるケースもあります。これはPayment Disputeという別の手続きで、5暦日以内の判断が必要です。対応の型はPayment Disputeの記事にまとめてあります。ここでも武器は同じで、追跡・署名・写真という日頃の証拠です。
もう1つ、中で起きる型に共通の注意があります。配送先は、チェックアウトで指定された住所だけ。メッセージで「別の住所に送って」と頼まれても応じません。出品時の条件にない要求(別住所への発送、出品にない配送方法、値引きの強要など)は、eBayのポリシーがバイヤーの禁止行為として挙げているもので、応じてしまうと保護の前提が崩れます。正しい住所で買い直してもらうのが正解です。
出品初日にやる事前設定:Buyer requirementsとブロックリスト
ここからは、開店前の防犯設備の話です。eBayにはBuyer requirements(バイヤーの条件設定)という仕組みがあり、条件に当てはまるバイヤーの入札・購入を自動的にブロックできます。設定できる条件は3種類です。
① 配送先の住所が、自分の発送除外国にあるバイヤー。発送しない国からの注文を入口で止めます。② 未払いで注文をキャンセルした履歴のあるバイヤー。支払わないまま取引を流した回数が一定以上の相手を止めます。③ 過去10日間に自分から一定数以上を落札・購入しているバイヤー。買い占めのような不自然な連続購入を止めます。回数などの細かい条件は、設定画面で選べます。
設定場所はアカウント設定のセラー設定(Selling preferences)です。下の実画面のとおり、「Your buyers」の段に入口が2つ並んでいます。上の「Managing who can buy from you」が今説明した条件設定(Buyer Management)の入口、すぐ下の「Blocked buyer list」が次に説明するブロックリストの入口です。条件を選んだら、「Apply above settings to active and future listings(現在と今後の出品すべてに適用)」にチェックを入れて保存します。これを忘れると新しい出品に効きません。あわせて同じ画面の「Don't allow blocked buyers to contact you(ブロックしたバイヤーからの連絡を受け取らない)」もオンにしておくと、ブロックした相手からのメッセージも止まります。
取引したい相手が条件に引っかかってしまう場合のために免除リスト(exemption list)があり、特定のユーザー名だけ条件から外せます。また、この設定が誰をブロックしたかは履歴(activity log)で確認できるので、「設定が厳しすぎてお客さんを弾いていないか」を後から見直せます。
もう1つがブロックリストです。設定ページ(Block buyers from your listings)の画面の説明にあるとおり、リストに載せた相手はあなたの出品への入札・購入・オファー・出品ページからのメッセージ送信ができなくなり、最大5,000人まで登録できます。
入力の形だけ、実画面で覚えてください。下の図の枠内のように、それぞれのバイヤーIDのあとに半角カンマ「,」を入れて区切り、入力し終えたらSubmitを押します。「カンマ→ID」ではなく「ID→カンマ」の順です。追加するときも同じで、いちばん後ろにIDを書き足してカンマで区切り、Submitを押し直します。解除したいときは、リストからそのIDを消してSubmitし直すだけです。画面には「登録した相手は年に一度は見直す」「消したリストは3か月以内ならRestore listで戻せる」という案内もあります。
使いどころは「もう取引したくない」と感じた相手です。理不尽な要求をしてきた、外部取引に誘ってきた、支払い前から値引きを迫ってきた——。進行中の取引はブロックしても最後まで続きますから、ブロックは過去への罰ではなく「次を防ぐ」ための道具です。取引が終わったタイミングで、静かにリストに足しておく。相手に通知は行きません。
通報(Report a buyer):ケース対応とは別の「記録づくり」
悪質な行為に実際に遭ったら、Report a buyer(バイヤーの通報)を使います。ここで大事なのは位置づけです。通報は、目の前の返品やケースを解決する手続きとは別の、並行して行う記録づくりです。返品には返品の、未着には未着の、Payment DisputeにはDisputeの手続きを期限内に進めながら、「このバイヤーはポリシー違反をしています」という報告を、eBayに対して別枠で残す。この報告が、後で説明するセラー保護の判断材料になります。
手順はシンプルです。eBay Japanの公式案内では、通報ページ(Report a buyerの専用ページ)を開き、ユーザー名や注文番号で取引を検索して、該当の取引の「報告」から理由を選んで送信する流れが示されています。Seller Hubの注文詳細からもたどれます。理由の選択肢には、出品に含まれない要求をされた、虚偽の主張をされた、返金保護の仕組みを濫用された、eBay外での取引を持ち掛けられた、といった項目が並んでいて、この記事で見てきた手口とそのまま対応しています。
1つだけ強い注意があります。ポリシーに違反していないバイヤーを故意に通報することは、それ自体がセラー側のポリシー違反です。「気に入らないから通報」ではなく、「禁止行為に当たるから通報」。この線を守っている限り、通報はセラーの正当な権利です。何が禁止行為かは、この記事の手口④〜⑥とバイヤーの禁止行為(別住所への発送要求など)を思い出してください。
セラー保護:報告したセラーをeBayはどう守るか
「通報して意味があるのか」と思うかもしれません。あります。eBayはバイヤーの禁止行為を定めたポリシーと対になる形で、セラー保護(Seller Protections)を明文化しています。
まず、悪質行為が認められたバイヤーに対しては、eBayが警告、利用の制限、アカウントの停止といった措置を取ります。そしてセラーの側には、そのバイヤーが残したネガティブ・中立評価の削除や、ケースをセラーレベルの計算から除外する扱いが用意されています。ネガティブ評価の対応の記事で書いた削除申請の根拠の1つが、ここにあります。
個別の場面の保護も具体的です。正確に説明した商品への虚偽の「説明と違う」主張をeBayが認めた場合には、評価の削除に加えて返送ラベル代の補助(最大$6.00)が受けられます。使用・破損された返品では、バイヤーを報告することを条件に返金額から最大50%を差し引くことが認められています。未着の主張に対しては、eBayと連携した配送方法の追跡を配達予定日前にアップロードし、配達成功の証拠があれば、返金の責任を負いません。
気づいたでしょうか。保護の条件は、どれも「日頃の丁寧な仕事」そのものです。正確に説明して出品する。追跡の付く方法で送り、番号を期限内にアップロードする。高額品には署名を付ける。証拠を残す。そして違反には通報で記録を残す。特別な防衛術があるのではなく、普段の仕事の丁寧さが、そのまま保護の受給資格になっています。
怖さを設定と習慣に変える:今日やることリスト
この記事の内容を、行動の順番に置き直します。
今日、出品する前にやること。Buyer requirementsの3条件を設定し、すべての出品への適用にチェックを入れる。ブロックしたバイヤーからの連絡を受け取らない設定をオンにする。ここまでで、入口の防犯設備は完成です。
毎日の取引で守る習慣。支払いの確認はメールではなくOrders画面で。発送はチェックアウトの住所だけに。追跡番号は配達予定日前にアップロード。$750以上は署名確認。シリアルと状態は写真に残す。外部決済・外部連絡先の誘いには乗らない。eBayを名乗るメールはMy eBayのメッセージで真偽を確かめる。
遭ってしまったら。目の前のケースは期限内に手続きで受けながら、Report a buyerで通報し、証拠を添えてセラー保護を求める。そして、もう取引したくない相手は、取引が終わったらブロックリストへ。
詐欺の話は、知らないうちは漠然と怖く、知ってしまえば「設定と習慣の話」に変わります。怖さを理由に始められないでいる人にこそ、この記事の設定を最初の日に済ませて、安心して1品目を出してほしいと思います。
- Buyer requirementsを設定した(発送除外国・未払い歴・10日間の購入数の3条件+全出品への適用チェック)
- 「ブロックしたバイヤーからの連絡を受け取らない」をオンにした
- ブロックリストの場所(Block buyers from your listings)を開いて確認した(バイヤーIDのあとに半角カンマで区切る・最大5,000人・相手に通知なし)
- 入金確認はメールではなくOrders画面で行うと決めた
- 配送先はチェックアウトの住所だけ、と決めた(メッセージでの住所変更には応じない)
- 追跡は予定日前にアップロード・$750以上は署名確認、を徹底している
- 高額品はシリアル番号と状態を写真で残している
- 外部決済・外部連絡先の誘いは断る(または無視する)と決めた
- Report a buyerの通報ページの場所を確認した(虚偽の通報は自分の違反になる点も理解した)