先に結論:未着ケースは3営業日の初動、エスカレーション後は主導権がeBayに移る
eBayの未着ケース(INR)は、開かれたら3営業日以内に対応するのが基本ルールです。追跡情報を提示する、返金するなど、自分から動けば問題ありません。期限内に対応しない、または合意に至らない場合、バイヤー(またはセラー自身も)が「Ask eBay to step in」を選べるようになり、判定の主導権がeBayに移った「Case」にエスカレーションされます。
この記事では、未着ケース(INR)を中心に、3営業日以内にやるべきことと、エスカレーションされてCaseになった後にできることを分けて解説します。両者はできることがまったく違うので、区別して押さえておく必要があります。
- 対象は主にINR(Item Not Received=商品未着)とSNAD(Significantly Not As Described=説明と著しく違う)の2種類
- Requestが開いたら3営業日以内に応答する。放置がいちばんの悪手なのはここでも変わらない
- INRは追跡情報の提示・返金、SNADは実質的に返品リクエストと同じ土俵で対応する
- 自分から早く返金した場合はディフェクト(ペナルティ記録)が付かない。ディフェクトが付くのは、放置してエスカレーションされ、eBayが介入して強制返金になった場合だけ
- エスカレーションされeBayがCaseとして介入すると、セラーは独自に返金することもできなくなり、eBayの判定を待つことになる。負けると強制返金+ディフェクト
- 1件ごとの損得だけでなく、未着ケースが積み重なるとセラーダッシュボードの「商品未着率(INR%)」が悪化し、アカウント自体に制限がかかることがある
未着ケース(INR)・SNAD・Open Caseの関係を整理する
eBayのトラブル対応は名前が似ていて混同しやすいのですが、「最初にどの窓口を開くか」「最終的に誰が判定するか」で見分けると整理できます。
- 未着ケース(Item Not Received):バイヤーが「商品が届かない」ことを理由に開く。この記事の主題
- 返品リクエスト:バイヤーが「説明と著しく違う(SNAD)」等を理由に開く、未着ケースとは別の入口。基本はセラー自身が判定する(3つの選択肢:受入・返金のみ・一部返金)。詳しい対応は返品リクエストの記事を参照
- Payment Dispute:バイヤーが決済会社(カード会社等)に直接申し立てる。決済会社が判定し、eBayすら介入できないケースもある
未着ケース・返品リクエストのどちらも、セラーとバイヤーの間で解決できないまま長引くと、双方が「Ask eBay to step in」でeBayに介入を求められ、判定はeBay自身が下す「Case」に格上げされます。この記事は主に未着ケース(INR)がCaseにエスカレーションするまでの流れを扱い、返品リクエスト側がエスカレーションされた場合の共通点にも触れます。
商品未着率(INR%)というアカウント全体の指標
未着ケースが厄介なのは、その場の返金額の損失よりも、セラーダッシュボードの「商品未着率(INR%)」というアカウント全体の評価指標が悪化することにあります。eBayはShipping Performance Policyに基づき、開かれた未着リクエストの数から商品未着率を算出し、市場平均と比較して3段階で評価します。
- 評価は3段階:「良好」(市場平均以下・制限なし)/「改善の必要あり」(市場平均超だが今回は制限なし)/「アカウントへの制限」(市場基準を大幅超過・リスティング取り下げや販売制限)
- 更新頻度:毎週水曜日
- 対象期間:評価日直前の土曜日から60日さかのぼった期間に、最遅配達予定日が含まれる全取引
- 集計単位:発送元(日本国内/日本国外)ごと+すべての対象取引。全項目で市場平均を超えないのが目標
- 確認先:eBayセラーダッシュボードを週1回のルーティンにする
- 本節の数字・仕組みは執筆時点の案内にもとづくもの。最新の評価基準・制限の解除条件は、必ずセラーダッシュボード内の説明を確認する
- 週1回、発送作業のついでにダッシュボードを開く習慣をつけると、悪化の兆しに早く気づける
未着ケース(INR)への対応:3パターンの動き方
INRのRequestは、バイヤーが推定配達日(Estimated delivery date)から30日以内に開けます。開いたら、セラーは3営業日以内に、追跡の状態に応じて次の3パターンのいずれかで動きます。
① 追跡なし・未発送 → 迷わず自主返金
追跡なしで発送した、またはまだ発送していない場合、こちらに配達を証明する手段がありません。実質即時の全額返金一択です。上の結論でも触れたとおり、自分から動いて返金する分にはディフェクトが付きません。ケースを放置してエスカレーションされ、eBayの介入で強制返金になった場合だけディフェクトが記録されます。「粘って強制返金」がいちばん損で、「早めの自主返金」が実質的な最善手です。
② 追跡が止まっている・反映されない → 連絡と調査を並行し、期限内に決断
- まずバイヤーへ一報する。発送済みであることと、輸送調査を始めることを伝える
- 配送会社へ調査を依頼する。クーリエならカスタマーサポート、国際郵便なら郵便局窓口。結果が出るまで数週間かかりケースの期限には間に合わないことが多いが、後日の交渉材料になる
- 期限内に決断する。バイヤーが待ってくれるなら合意を取って待機。待てないなら3営業日以内に自主返金でクローズし、エスカレーションだけは避ける
Thank you for your patience. I shipped your item on time, and I have just opened an official investigation with the carrier regarding the tracking. I will update you as soon as I hear back. Would you be able to allow a little more time for delivery? I will take full responsibility until this is resolved.
(この度は商品の到着が遅れておりご心配をおかけしています。当方は期日内に発送を完了しており、現在輸送会社へ正式な調査を依頼しました。状況が分かり次第すぐにご報告します。到着まで少しお時間をいただけないでしょうか。最後まで責任を持って対応いたします。)
Due to the case deadline, I will issue a full refund now. However, the package is most likely still on its way to you. If it arrives after the refund, please refuse the delivery. If you accept the item, I will need to invoice you for the payment.
(ケースの期限があるため全額返金いたします。ただし商品は現在もお客様の住所へ向かっている可能性が高いです。返金後に商品が届いた場合は、受け取らずに受取拒否をお願いします。受け取られた場合は代金を改めて請求させていただきます。)
返金後に配送会社の調査結果で「配達済み」が確認できたら、eBayカスタマーサポートへ証拠を添えて返金の返還を相談できる場合があります。
③ 追跡上「配達済み」 → 証拠を積んで返金しない
- ケース画面に追跡番号をアップロードする。「配達済み」表示が最大の武器になる
- eBayサポートにも連絡し、「配達済みなので問題ない」という記録を残しておく。万一エスカレーションされた際の保険になる
- 返金はしない。条件を満たしていれば、基本的にセラー保護でクローズされる
説明と著しく違う(SNAD)の場合は返品リクエストが入口
「説明と著しく違う(SNAD)」とバイヤーが主張する場合、これは未着ケースとはまったく別の入口=返品リクエストから始まります。いきなり「Case」として扱われるわけではありません。3つの選択肢(受入・返金のみ・一部返金)からセラー自身が判定する、という具体的な対応は返品リクエストの記事で詳しく解説しているので、そちらを参照してください。
ここで押さえておきたいのは、返品リクエストも未解決のまま長引くと、未着ケースと同じ「Ask eBay to step in」のエスカレーション経路に乗るという共通点です。合意できずにエスカレーションされた後は、セラー自身が結論を選べなくなり、eBayが証拠を見て判定します。その判定基準は次の見出しで解説します。
- SNADと判断されると、返品ポリシーの内容に関わらず受け入れ義務が発生する。「返品不可」設定は効かない
- 虚偽のSNAD(実際は説明どおりの商品なのに難癖をつけるケース)への対抗策は、詐欺・悪質バイヤー対策のセラー保護(虚偽SNAD認定によるネガ評価削除等)を参照する
エスカレーション(Open Case化)の流れと、証拠提出・判定基準
3営業日の対応期限を過ぎると、バイヤー・セラーどちらの画面にも「Ask eBay to step in」という選択肢が表示されるようになります。エスカレーションされてから証拠を出す画面が新たに現れるのではなく、この「Ask eBay to step in」を選んで理由を送信すること自体が、エスカレーションを成立させる操作です。
この操作でCaseになると、セラーが独自に返金や交渉を打ち切ることはできなくなります。できるのは、eBayが求める情報・証拠を期限内に提出することだけです。判定は通常、介入から48時間前後で出ます。
判定でeBayが見るのは、主に次の点です。
- 未着ケースなら、統合キャリアの追跡番号がeBayにアップロードされているか、その追跡が配達完了を示しているか
- 返品リクエスト(SNAD)なら、商品説明・写真と、バイヤーが主張する状態の食い違いの有無
- 返品ポリシーどおりに対応したか、返送先住所の情報が最新か
- $750以上の署名確認など、金額に応じた追加要件を満たしているか
- まず3営業日を過ぎていないかを確認する(過ぎていれば早急に応答する)
- 追跡番号・配達ステータスのスクリーンショットを保存しておく
- SNADなら、出品時の商品説明・写真と、バイヤーから届いた写真を並べて突き合わせる
- eBayから提出を求められた情報は期限内に過不足なく出す
- 判定に納得できない場合、新しい証拠(追跡の確定や返金済みの証明)があれば30日以内に不服申し立てができる
eBayがバイヤー有利と判定すると、バイヤーへの全額返金が実行され、その分はセラー側の資金から差し引かれます。加えてディフェクト(ペナルティ記録)が付き、これが積み重なるとセラーレベルの低下につながります。「金額を払えば終わり」ではなく、アカウントの健全性にも響くという点を踏まえて、初動の3営業日を軽視しないことが大切です。
備えは「追跡・記録・期限内対応」の3つ
Open Caseは、名前だけ聞くと身構えてしまいますが、中身は「3営業日以内に応答する」「追跡と記録を残す」「エスカレーションされても期限内に証拠を出す」という、地味な基本の積み重ねです。特別なテクニックよりも、発送のたびに追跡をアップロードするという日々の習慣と、週1回のセラーダッシュボード確認そのものが、いざという時の一番の武器になります。
「配達完了なのに届いていないと言われた」という具体的な場面の初動は「配達済みなのに届いていないと言われたら」に、支払い側のトラブルである「Payment Disputeの対応」、商品到着後の「返品リクエスト対応」も読んでおくと、トラブル対応の全体像がつながります。
出典:eBay公式「セラーダッシュボード 商品未着率(INR%)」(ebay.co.jp/knowledge/selling/article55)、eBay公式「対応方法例:商品を受け取っていない(Item Not Received)」(ebay.co.jp/knowledge/trouble/article92)。掲載しているケース画面のスクリーンショットは、実際の管理画面で撮影したものです。